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カズ 必然の今季3得点 48歳ならではの“ゴールの方程式”

[ 2015年7月9日 08:25 ]

6月28日の水戸戦の後半ロスタイム、決勝ゴールを決める横浜FCのFW三浦知良

 ボールが止まって見える、ゴールまでの道筋が見えた。時にゾーン(極限の集中状態)に入った打者、ストライカーが口にする言葉だ。そして今季、J2横浜FCのFW三浦知良(48)には本当に道筋が見えているのではないか、と思えて来る。上からピッチを見下ろせる記者席からカズを追う。得点が決まる前の、そのまた前のプレーの時点で「あ、決まる」と確信する自分がいる。

 例えばロスタイムに決勝弾を決めた6月28日の水戸戦。カズは中盤の小野瀬がミドルシュートを放った瞬間、誰より早くゴール前に詰めていた。カズによれば小野瀬がボールを持った時点でプレーの選択肢は2つあったという。サイドのフリーな選手にパスを出すか、自分で狙うか。

 30メートル近く離れた位置にいたカズには小野瀬の表情が見えていた。「小野瀬はシュートを撃つ気満々だった」。瞬時に得点シーンから逆算を始める。小野瀬と相手GKの位置を見て、シュートを弾きそうな方向に詰めた。小野瀬が右足を振った瞬間、記者席で「あっ!」と言う声を上げていたのは言うまでもない。

 開幕前、横浜FCが行った体力測定はカズを少しばかり落胆させた。幅跳びや20、60メートルの短距離走のタイムはチーム最下位だった。だが、だからこそカズはペナルティーエリア内の駆け引きに勝負を求める。日本代表戦を観れば目を皿にしてFW岡崎の動きを追うのも、その1つだ。プロ30年目、48歳にしてなお、向上心の塊。FWとして日々、進化を遂げている。

 今季、序盤に決めた2得点はいずれもヘッド弾。2トップを組む長身FW大久保との連係から生まれたものだ。後方から大久保にロングボールが入る。その瞬間、カズは相手DFの死角に入る動きをみせ、必ずこぼれ球に備えているのだ。一緒に記者席に座っていた川本治氏(本紙評論家)は思わず唸った。「是非、サッカー少年たちに見せたい動きだ」と。

 相手の虚を突くロングシュート、相手をなぎ倒すような力感はないかもしれない。それでもカズの得点には方程式(道筋)がある。少なくとも今季の3得点は偶然ではなく必然だった。だから思う。カズよりもスピードがあり、フィジカルが強いFWはJリーグにも大勢いる。カズの動きを学ぶべきFWは少年たちだけではないはずだ。(牧野 真治)

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2015年7月9日のニュース