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なでしこ女王奪回へ 新たな課題は戦術の引き出しを増やすこと

[ 2015年7月7日 09:30 ]

<日本・米国>米国代表に拍手で見送られながら表彰台へと向かう宮間らなでしこイレブン

 カナダ大会でW杯連覇を狙ったなでしこジャパンは、米国に屈し、12年ロンドン五輪に続いて準優勝に終わった。世界女王の座を再び獲得するために何が必要なのか。日本サッカーが目指すべきスタイルは何か。「なでしこ女王奪回へ」と題して、カナダでの激闘を検証する。

 選手たちは明らかに混乱していた。米国戦の後半26分。佐々木監督は守備の枚数を減らし攻めに出る意図で3―4―3への変更を指示した。しかし、初めてのシステムに選手がすんなり移行できるはずもない。「何?」とある選手は大声で聞き返した。その後、CKを取った際に選手がベンチに近寄り確認。だが、付け焼き刃で劣勢を打開できるほど決勝戦は甘くはなかった。

 前回大会のなでしこの優勝から、女子サッカーの潮流は変わった。ロングボールを放り込み、フィジカルを押し出すスタイルから、パスをつなぎながら守備を崩す。日本よりも体格に恵まれた欧米の強豪国がなでしこのサッカーを研究し、進化させてきた。「対応できる力を」と佐々木監督が言うように、並みいる列強の先を行くには基本戦術4―4―2だけでなく複数のオプションが必要となった。だが、試行の場が少なすぎた。

 その分岐点は今年3月のアルガルベ杯だ。W杯の前哨戦と位置付けた佐々木監督は4―4―2の成熟を求めた。その一方で、選手たちは昨年5月のアジア杯で可能性を見せたトップ下を置く4―2―3―1を試したい思いがあった。指揮官に直訴した選手もいた。だが願いは通じず、実際にオプションを試したのはアイスランドとの9位決定戦の後半のみ。宮間が2列目の中央に入るとそこから2点が生まれた。ある選手は「試合をつくれる選手が前にいた方がパスが回る。あれが(自分たちの)サッカー」と4―4―2に固執する指揮官にいら立ちを見せた。

 今大会前の国内合宿では、佐々木監督は初めて守備的な5―4―1、中盤を厚くする4―1―4―1の練習を取り入れた。「やらないよりはやった方がいい」と多くの選手が口をそろえたが、「対応が難しい」と漏らした選手もいた。直前にやることは限られる。もう少し早くから、複数オプションでの選手の適性を見極めるべきだった。

 基本戦術が通用しない時、柔軟なポジション変更は武器になる。4―4―2への固執は新戦力発掘につながらず、結果、今大会も23人のうち17人が前回大会出場者だった。若返りが必須と言われながら、世代交代が進まない遠因ともなっている。リオデジャネイロ五輪まで1年。戦術の引き出しを増やすことは、なでしこの新たな課題だ。(特別取材班)

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