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離脱安藤が“女神” なでしこ、劇的決着でW杯連覇に王手!

[ 2015年7月3日 05:30 ]

<日本・イングランド>決勝進出を決め抱き合って喜ぶ澤(10)らなでしこイレブン

女子W杯準決勝 日本2―1イングランド

(7月2日 エドモントン)
 劇的な幕切れで連覇に王手をかけた。なでしこジャパンはイングランドとの準決勝で2―1と競り勝ち、2大会連続の決勝進出を決めた。後半ロスタイムにMF川澄奈穂美(29=INAC神戸)の右クロスが相手のオウンゴールを誘って勝ち越し。過去4回の対戦で一度も勝ったことのない難敵に初めて土を付けた。米国との決勝は5日午後4時(日本時間6日午前8時)にバンクーバーで行われる。
【試合結果 女子W杯決勝T なでしこジャパンメンバー】

 エドモントンに、奇跡の花が咲いた。1―1の後半ロスタイム、右サイドを突破した川澄がアーリークロスを送る。中央で大儀見、岩渕が反応した鋭い弾道のボールをDFバセットが体を投げ出して右足でクリアしたが、軌道の変わったボールはクロスバーを叩いてゴール下に落下。ゴールラインテクノロジーで得点を確認した主審が、決勝点と認める笛を鳴らした。激闘に終止符が打たれるとサブの選手がピッチになだれ込み、歓喜の輪が至る所にできた。佐々木監督も「劇的なゴール」とうなった。

 女子サッカー界のスピルバーグ監督を自任する佐々木監督も予想できない展開だった。過去2分け2敗の難敵イングランドはロングボールをひたすら放り込む。「今までで一番嫌なことをやってきた」と鮫島。体格で劣る日本は空中戦で何度も吹き飛ばされた。前半に有吉が得たPKを宮間が決めて先制したが、すぐにPKを沈められ、今大会初めて追いつかれた。準々決勝に続き、強烈な日差しが照りつけるエドモントンでの消耗戦。劣勢を強いられ、倍以上のシュート15本を受けた。

 だが女王は負けない。ピンチになれば数的優位をつくってブロックを敷き、攻撃では丁寧にボールをつなぎゴールに迫った。自分たちのサッカーを貫ける余裕と自信があった。延長戦を覚悟し、指揮官は「澤をボランチで投入し、勝負に懸けるなら菅沢、守るなら川村」という準備もできていた。それだけに「本当にタフな試合だった」と胸をなで下ろした。

 奇跡のドラマには必ず伏線がある。決勝進出なら、スイスとの初戦で左腓(ひ)骨外果骨折を負って帰国した安藤が再合流することになっていた。試合前とハーフタイムのロッカールームは安藤の帰国以降、無料通話アプリ「LINE」でつないでいる。この日の試合前、安藤の願いがロッカーに響いた。「バンクーバーに私を連れていって」。その言葉に誰もが奮い立った。「それを実現できた彼女たちは素晴らしいと敬意を表したい」と指揮官も目を細めた。

 連覇まであと1勝。前回大会、12年ロンドン五輪に続き主要大会決勝で3度連続、米国と激突する。決戦には背番号7を着た白クマのぬいぐるみではなく、安藤本人のベンチ入りも可能だ。「世界の女子サッカーのためにも11年のような素晴らしいファイナルの試合ができたら幸せ。結果は神様しか知らない」と佐々木監督。運命の7・5。4年前、東日本大震災で沈む日本を勇気づけたなでしこが、サッカーの神様を再び振り向かせる。

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