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ペトロ“超攻撃”で初栄冠!J監督10年目「オシム流」開花

[ 2015年6月21日 08:37 ]

<神戸・浦和>槙野(右)と笑顔でガッツポーズするペトロヴィッチ監督

J1第1S第16節 浦和1―1神戸

(6月20日 ノエスタ)
 「無冠の名将」はもう返上だ。来日10年目。6分を超える長いロスタイムをしのいで勝ち点1を得ると、ペトロヴィッチ監督は悲願のタイトルを手にした。「16節負けなしで第1ステージ優勝は素晴らしい結果」。開幕から16戦連続無敗はJ1新記録だ。

 広島では07年天皇杯、10年ナビスコ杯で準優勝。浦和でも昨季は優勝目前の大失速で2位に終わった。「チームは第1節からきょうまで常に次はベターに戦うと話してきた。勝った試合にも必ず反省材料があるし、その一つ一つの積み重ねが安定して攻撃的にできた理由。あとは(失速した)12年、14年の苦い経験から学んでそれを生かした」。その結果、壁をついに乗り越えた。

 他に類を見ない3―4―2―1布陣が代名詞だ。両ウイングバックが高い位置を取る5トップの超攻撃スタイル。全員が連動するため熟成に時間と根気が必要だった。就任4年目で戦術と信念が花を咲かせた。今季10戦以上出場の選手はGK西川を除く全員が得点を記録した。左サイドの宇賀神は「見ている方も、やっている方もこんなに楽しいサッカーはなかなかないと思う」と話す。

 元日本代表監督オシム氏の流れをくむ。96年から3年間、シュトルム・グラーツ(オーストリア)の監督、コーチという師弟関係で名将の薫陶を受けた。日々、ウイスキー片手に睡眠時間を削って議論。欧州CLや各国リーグ戦を見ながらサッカーの潮流、分析法を学んだ。「指導者としてこういうふうに見ていけば良いと思った」。守備から指導に着手する監督が多い中、攻撃から組み立てるのも名将の教え。濃密な時間は血肉となった。

 13年にリーグ1位の66得点も、失点は同12位の56点だった。まず攻撃の“型”を完成させると、14年以降は守備の整備に力を注いだ。バイエルンMなど名門クラブの映像を見せた。クラブハウスの壁に各選手の走行距離を貼り付け、走る意識を明確にした。昨季32失点でリーグ4位。今季は総得点34が断然の1位。15失点はリーグ3位で初タイトルに結びつけた。

 「あくまで34節を大きな節目と考えたい。そして次の17節を集中して戦いたい。大きな目標は34節を終えて一番上にいること」。ステージ優勝の余韻には浸らず、指揮官は新たな目標を掲げた。

 ◆ミハイロ・ペトロヴィッチ 1957年10月18日生まれ、セルビア(旧ユーゴスラビア)出身の57歳。現役時代は主にMFでシュトルム・グラーツ(オーストリア)などで活躍して93年引退。同クラブでは元日本代表監督のオシム監督の下でコーチを、03~06年に監督を務めた。06年6月から11年まで広島で監督。12年から浦和を指揮。主な成績は広島時代に08年J2優勝、07年天皇杯準優勝、10年ナビスコ杯準優勝。浦和では13年ナビスコ杯準優勝。89年にオーストリア国籍を取得。

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