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シャフタル 紛争で本拠移転も…クラブ団結でCL決勝T進出目指す

[ 2014年11月25日 07:30 ]

爆撃による衝撃波で被害を受けたドンバスアリーナ(AP)

 欧州チャンピオンズリーグ(CL)は25日に1次リーグE~H組の第5節8試合が行われる。H組で勝ち点8を挙げて2位につけるシャフタル・ドネツク(ウクライナ)は、ホームでのビルバオ(スペイン)戦に勝てば2季ぶりの1次リーグ突破が決まる。政府軍と親ロシア派勢力の戦闘が続くウクライナ東部ドネツクを離れた苦難のシーズン。地元に戻れる日を信じて戦い、3度目の決勝トーナメント進出を目指す。

【欧州CLグループリーグ H組順位表】

 ディナモ・キエフと並ぶウクライナの名門シャフタルが、ドネツクを離れる決断を下したのは7月下旬。マレーシア航空機撃墜を受け、フランス遠征中のチームから南米出身選手6人がウクライナ再入国を拒否して離脱した直後のことだ。離脱は代理人が画策したもので、すぐに復帰した6選手はニューカッスル(イングランド)へレンタル移籍した1人を除き、現在も所属している。だが、紛争地域のドネツクでサッカーを続けるのはやはり不可能だった。

 クラブ事務所は武装勢力に占拠された。練習場は爆撃で破壊され、12年欧州選手権の舞台だった本拠ドンバス・アリーナは8、9、10月と砲撃された。クラブは首都キエフに事務所を移し、ホームゲームを主にウクライナ西部リビウで行っているが、ドネツクから1000キロ以上離れたリビウはもともと“アウェー”。アリーナ・リビウは閑古鳥が鳴き、就任11年目のルチェスク監督も「ファン抜きで戦っている」と嘆くほど。キエフで開催された試合ではホーム扱いにもかかわらず、ブラジル人MFテイシェイラが観客にサル呼ばわりされ、怒ってボールを投げつける事件も起きた。

 昨季まで5連覇した国内リーグも既に3敗を喫し、現在3位と苦戦。それだけに欧州CLだけが明るい話題だ。ビルバオとポルト(ポルトガル)に引き分けたものの、BATEボリソフ(ベラルーシ)には7―0、5―0と圧勝。東欧随一の資金力とブラジル人選手を軸とした戦いで09年UEFA杯(現欧州リーグ)優勝、11年CL8強の実績があり、GKピャトフも「まずは1位通過が目標」と鼻息が荒い。

 地元に戻れる保証はない。親ロシア派はシャフタルに代わる新クラブの設立構想を明かし、アフメトフ・オーナーも新ホームにすべくアリーナ・リビウの買収に乗り出した。しかし、クロアチア代表DFスルナが「今すぐ戻りたい。ドンバス・アリーナで、ファンの前でプレーしたいんだ」と話すように、選手たちは帰還を切望している。母国で内戦を体験したスルナは「ドネツクにお世話になった恩返し」と故郷の名産・オレンジを20トン購入しウクライナの子供2万人に配るという。「戦争が終わったらドネツクへ戻ってストリートにキスするつもりさ」。平和は必ず訪れると信じて戦っている。

 ▼FCシャフタル・ドネツク 旧ソ連時代の1936年創設。ドネツクは炭鉱都市として有名で「鉱山労働者」を意味する「シャフタル」がチーム名となった。ソ連杯で4度優勝しウクライナ独立に伴い92年からウクライナ・プレミアリーグに参戦。01~02年にディナモ・キエフの10連覇を阻止して初優勝するなどリーグ制覇9回、ウクライナ杯優勝9回。08~09年にUEFA杯(現欧州リーグ)優勝、10~11年欧州CLベスト8。アフメトフ・オーナーは政界にも影響力を持つ国内1位の富豪。

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2014年11月25日のニュース