×

明暗分けた守備力&選手層 王国ブラジルは過去の話 4年後、日本は…

[ 2014年7月14日 13:07 ]

24年ぶり4度目の優勝を飾り、トロフィーを手に喜ぶドイツ代表イレブン(ゲッティ)

W杯ブラジル大会 ドイツ1―0アルゼンチン

(7月13日 リオデジャネイロ)
 優勝がドイツ、準優勝がアルゼンチン、3位がオランダ、4位がホスト国ブラジルに終わった今回のワールドカップ(W杯)ブラジル大会。大会全体を通じて、どういう印象を持ったのか。そして、4年後のロシア大会に向けて日本代表はそう変わらなければいけないのか。スポニチ本紙評論家の川本治氏(62)に総括してもらった。

 まずは「今回勝ち上がったチームは、全体的に守備力がしっかりしていた。守備から攻撃への切り替えの速さも目についた。ショートカウンターを生かすには、まずは守備をしっかりし、そこから攻めること。今大会は、そこをしっかりやっているチームが勝ち上がった」と大会を通して印象を持ったという。

 今大会は98年フランス大会に並ぶ最多タイの171得点というゴールラッシュに沸いた。だが、川本氏は「得点は多かったが、結果的にオランダは3連続無失点だし、ドイツもそう。最後は攻撃力より守備力という大会だった気がする」と話す。

 そして、自国開催で、優勝候補筆頭と目されていながら4位に終わったブラジルについて、「ボランチ(守備的MF)がしっかりしていなかった。例えば、94年の米国大会ではドゥンガがしっかりしていたからこそブラジルは優勝できたが、今回はそれがなかった」と指摘。選手層が顕著に結果に現れたことについては、「ブラジルが典型的。ネイマールがいなければダメ。キャプテンのチアゴ・シウバがいなければダメ。でも、ドイツはケディアが出場できなくても、代わりに出た選手がしっかり仕事をこなすことができた」と振り返った。

 「ブラジルはサッカー大国と言われてきたが、もう過去の話になりつつある」と川本氏は言う。「間違いなくサッカー人口は多い。だが、ブラジルは色々な意味でお金持ちになってしまったのではないか」と以前に比べてハングリーさが欠如してきたと感じたという。

 最後に、今大会1分け2敗で1次リーグ敗退に終わった日本代表と、結局1勝もできなかったアジア勢の今後についても聞いた。

 「W杯という大会で、持っている力の最低でも100%を出せるかどうか。まずは、それが選ばれた選手の役目だと思う。決勝を見ていても、点が入らなくても、ミスがあっても、1つのボールに向かっていく。頭を打ってでもボールを奪いにいく。プレッシャーの中で、持っている力をチームの中で何人が出せるか。4年後に今回のメンバーから何人が出られるか分からないが、テレビで見ていた選手、子どもたち、指導者も含め、日本がW杯でベスト16、ベスト8に行くためにはどうするべきかを考えなくてはいけない。優勝はドイツだが、世界の力は拮抗してきている。負けたチームは打倒ドイツに燃えてくるし、ブラジルが今後の4年間で戻って来れるのかも含めてロシア大会まで楽しみな4年間になる。日本、アジア勢がどこまで食い込めるか。置いて行かれないようにしなくてはいけない」。川本氏はそう締めくくった。

 ◇川本 治(かわもと・おさむ)1952年(昭27)5月1日、北海道釧路市生まれの62歳。室蘭清水ヶ丘高校2年までGKを務め、中央大進学後以降はFWに転向。古河電工(現J2千葉)では9シーズンに渡ってプレーし、引退後はコーチ、監督、強化部長など要職を歴任した。現在は日本代表戦のほか、カテゴリーを問わずスタジアムに数多く足を運び、誠実な人柄で選手や関係者からの信頼も厚い。

続きを表示

この記事のフォト

2014年7月14日のニュース