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チリ戦で辛勝のブラジル 苦戦しながら崩れなかった2つの理由

[ 2014年6月29日 18:30 ]

延長戦の前に指示を出すブラジル代表のフェリペ監督(中央右)(AP)
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W杯決勝トーナメント1回戦 ブラジル1―1(PK3―2)チリ

(6月28日 ベロホリゾンテ)
 6月28日から決勝トーナメントに入り、いきなりブラジル-チリ戦が1-1で延長に突入し、PK戦の末にブラジルが3-2で勝利した。今大会屈指の好ゲームで、見応えのある試合だった。

 ブラジルはもともとゆっくりとボールを回してポゼッションしていくスタイルだったが、チリの運動量と前線からのプレスに対応するために、サッカーを変えた。縦に早く、ボールを奪ったら一気にゴール前に行く攻撃を繰り返していた。ボールをキープするより、相手にボールを持たせて、それを奪って早く攻めようという狙い。唯一高さで勝負したのが前半18分の先制点を挙げたCKの場面だけだった。技術に自信を持つブラジルでも、守備を固められると一瞬の隙を突かないと簡単にはゴールが奪えない。実際、ボール保持率はチリの方が上回っていたほどだ。

 4年前のW杯ではスペインのようにボールをポゼッションできるチームが主流だったが、今大会では少し変化していた。チリやメキシコのように、スペースを抑えてボールを取りに行くよりボールを持っている選手に厳しく行く。チリはブラジルのネイマールに対して2~3人でボールを取りに行っていたほどだ。4年間でサッカーが進化したということだ。

 もうひとつ、ブラジルが苦戦しながら崩れなかったのは、両センターバックとボランチが安定していたから。失点はミスからだったが、全体的には4人が安定しているので、大きなピンチはあまりなかった。両サイドが攻め上がっても、危ないカウンターをくらうことはない。交代も絶妙で延長を考えて交代を遅らせ、攻撃のスイッチを入れるのは選手交代だけではないということも感じさせられた。

 PK戦で2本セーブしたGKジュリオ・セザールはまちがいなく勝利の立役者だが、大会前は「GKが弱点」といわれていた。フェリペ監督と信頼関係があり、起用されているが、プレッシャーの中でGKの好守は蹴る選手を楽にしたと思う。次はコロンビアとの対戦、チリのように走られると苦しいが、ブラジルがどう対処するかも見ものだ。(小倉勉=ヴァンフォーレ甲府コーチ、元日本代表コーチ)

 ◆小倉勉(おぐら・つとむ)1966年(昭41)7月18日生まれ、大阪府出身の47歳。天理大卒業後に渡独し、ブレーメンのユースなどを指導。帰国後、92年から市原(現J2千葉)で育成部やトップチームのコーチ、強化スタッフなどを歴任した。06年からイビチャ・オシム監督、08年からは岡田武史監督の下で日本代表コーチを務め、10年W杯南アフリカ大会で16強入り。12年ロンドン五輪では関塚隆監督の下でコーチを務めて4強入りを支えた。五輪後の12年9月からJ1大宮でコーチ、テクニカルダイレクターを務め、13年8月から監督。14年からJ1甲府でヘッドコーチを務めている。

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