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【オシム分析2】試合運びに問題…日本サッカー界全体の経験不足

[ 2014年6月21日 09:30 ]

<日本・ギリシャ>後半、ヘディングで競り合う吉田

 数的優位に立ちながらゴールすら奪えずに終わったザックジャパン。獲得した勝ち点は1にとどまり、決勝トーナメント進出は非常に難しくなった。単調なサイド攻撃、またもや繰り返された慣れないパワープレー。元日本代表監督の「知将」イビチャ・オシム氏(73)がギリシャ戦の戦いぶりを検証した。

 【得点のチャンスを逃した理由】

 ただ、良かった時間帯もある。とりわけ後半20分から30分台にかけて、何度も危険なエリアに進入してギリシャゴールを脅かした。その時間帯は相手が疲労で走れなくなり、あと少しで決壊しそうな堤防のようだった。

 それまでと同じプレーをあと数回繰り返せば、向こうの守備陣は崩壊していたかもしれない。しかし、日本は吉田を前線に上げ、ロングボールを放り込む「パワープレー」を選択した。有効だったのはパワーではなくスピードだったのではないか。パワープレーに切り替えるべきではなかった。「スピードプレー」を続けた方が効果的だったはずだ。

 これは、代表チームというよりも、日本サッカー界全体の経験不足にも原因がある。試合の運び方、終わらせ方を身に付けていないのだ。芝居や映画と同じように、序幕があり、展開があり、クライマックスとエンディングが、サッカーの試合の中にもあるのだ。ギリシャはさすがに古代からの演劇の伝統がある国だ。退場者が出てからすぐ、自分たちのシナリオを書き換え、その通りに芝居を進めた。

 また日本は、試合の流れの中での緩急の差をつけることができなかった。さらに、当初のプラン通りに行かない場合の「プランB」や「プランC」を準備し、実行しなければならないが、その部分での知恵と決断が足りなかった。

 試合運びの知恵については、短期間に背が伸びる薬や注射が存在しないように、一晩で身に付くものではない。対策としては、レベルの高い試合を数多く見ることだ。それは何世代もかかるものかもしれない。W杯をただ自国の代表を応援するお祭りではなく、サッカーを見る目のレベルアップのチャンスとするために、小学生やその指導者は日本戦以外の素晴らしい試合をなるべく多く観戦してほしい。

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2014年6月21日のニュース