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韓国 価値ある勝ち点1 リアリスト指揮官 流れ変えた見事な采配

[ 2014年6月18日 19:09 ]

<韓国・ロシア>先制ゴールに歓喜の韓国イ・グノ(右)(AP)

W杯ブラジル大会1次リーグH組 韓国1―1ロシア

(6月17日 クイアバ)
 1次リーグ初戦の最後の試合、6月17日に韓国がロシアと1-1で引き分けた。韓国は初戦とあってリスクをおかさない試合運びを選択し、まずは失点しないように注意していた。

 サイドバックが攻撃参加して中盤の選手を追い抜く場面もなかったし、少ない人数で効率よく攻めることに徹していた。その中で後半途中から出場した李根鎬のミドルシュートが決まったが、ペナルティーエリア外から思い切りよく打った。

 洪明甫監督はロンドン五輪で韓国代表を率い、日本代表とも対戦したが、勝負に徹したサッカーをする。理想は持っていても、勝たなきゃいけない試合では現実に即した戦い方をする。

 3位決定戦では日本が「ロングボールに弱い」と分析され、ロングボールを多用された。この試合ではロシアの攻撃力を警戒し、守備に重点を置いた戦い方をしていた。相手を分析し、力関係を見極めた上で対策を練るリアリストだと思う。

 韓国の先制点は相手GKがハンブルして入るミスもあったが、選手皆がミドルシュートを打ち続けたからこそ入った。そして、後半10分に李根鎬を入れて選手交代で攻撃のスイッチを入れ、その李根鎬が決めた。しかも、最初に交代させたのがチームの中心選手の朴主永で、選手を奮起させて流れを変えたところは見事な采配だった。終盤もロシアの猛攻をよくしのぎ、引き分けに持ち込んだが、価値ある勝ち点1だと思う。

 韓国代表は朴主永、具滋哲、李青龍、孫弘?ら海外組が前線に並び、ディフェンスラインはアジアと韓国国内の選手が多い。そして特筆すべきは、12人がロンドン五輪代表で銅メダルを獲得した選手、オーバーエイジで入っていたGK鄭成龍も加えればロンドン→ブラジルと一貫した強化をしている。

 ロンドン五輪で優勝したメキシコ、2位のブラジルも多くの選手が五輪からA代表に入っているが、4強入りした日本も7人いたが、試合に出ていたのは山口とオーバーエイジの吉田だけで、少し寂しい気がする。大きな大会で蓄積したものが、次世代に残るようになればいいのではないか。(小倉勉=ヴァンフォーレ甲府コーチ、元日本代表コーチ)

 ◆小倉勉(おぐら・つとむ)1966年(昭41)7月18日生まれ、大阪府出身の47歳。天理大卒業後に渡独し、ブレーメンのユースなどを指導。帰国後、92年から市原(現J2千葉)で育成部やトップチームのコーチ、強化スタッフなどを歴任した。06年からイビチャ・オシム監督、08年からは岡田武史監督の下で日本代表コーチを務め、10年W杯南アフリカ大会で16強入り。12年ロンドン五輪では関塚隆監督の下でコーチを務めて4強入りを支えた。五輪後の12年9月からJ1大宮でコーチ、テクニカルダイレクターを務め、13年8月から監督。14年からJ1甲府でヘッドコーチを務めている。

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2014年6月18日のニュース