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【オシムの提言2】まだまだ遠い「昔の香川」ドルト時代を思い出せ

[ 2014年6月1日 11:59 ]

調子が上がらない香川

 <攻撃の収穫&不安> 印象に残ったのは柿谷だ。テクニックがあり、サッカーをよく知っている。何が一番いいかといえば、若さだ。若い選手はサッカー以外のあれこれのしがらみや重圧から自由にプレーする。柿谷はこれからもっといい選手になるだろう。自信を持って、のびのびとプレーすればいい。

 本田は何度かチャンスでシュートをしくじったが、本番で決めればいいことだ。試合全体の中で、次第に「チームのボス」になりつつあるという印象を受けた。存在感が増している。これまでと逆に、彼を遠藤や長谷部がもりたてようとしている。中盤のこの3人が息のあったプレーをすれば、他の若い選手もそれに従い、「監督が怒鳴る必要のない」チームができる。

 岡崎はハンディキャップ(体のサイズ)を運動量と責任感、勇気で補ってプレーしていた。攻撃の起点となるサイドバックの内田と長友も、しっかりプレーしていた。欧州でプレーしているこれらの選手については心配していない。

 香川については注目して見ていたが、まだ「昔の香川」に戻っていない。残念ながら、彼にとってはこの1年は「失われた時間」となってしまったようだ。サッカー選手として生き生きとしていたドルトムント時代を思い出してほしい。香川が復活すれば、中盤からゴール前にかけてのスピーディーなコンビネーションプレーが可能になり、相手にとってはこれ以上はないという危険なチームになれるだろう。

 あとは仕上げのシュートの正確性だ。これは技術よりも、メンタルの問題になる。冷静にシュートを打つには、自信と勇気が必要だ。重圧のかかる環境でこそ平常心を保つことが大切だと、それに気がつけば問題は半分は解決したも同様だ。

 大久保は、私が日本代表監督をしていた時代と同じく、油断のならない選手だった。当時よりも経験を積んで、相手との駆け引きもできるし、危険なエリアへの進入を繰り返した。大久保が加わることで、柿谷や香川とのコンビネーションにも新しいバリエーションが生まれる。W杯予選に出場していない「未知の選手」として対戦相手からは日本の秘密兵器と恐れられるかもしれない。

 <現段階での評価> 全体として「興味深いチーム」になっている。W杯への準備段階ということを踏まえた上で、多くの若い選手に数人のベテランをミックスした良いチームができつつあると思う。4年前とは多くの点で変化が見られる。若さと運動量に加え、経験のある選手がアクセントを付けている。コンディションがベストではない中で、クレバーな試合運びができる面も見せてくれた。

 まもなく本番だが、非常に楽しみだ。今回は私の故郷のボスニア・ヘルツェゴビナも初出場するが、日本と対戦するには準決勝まで進まなければならない。そうなれば素晴らしいことだが、果たして実現するだろうか。

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