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大久保 父一周忌に運命のW杯23戦士発表 控えでも!

[ 2014年5月12日 05:30 ]

控えでも出たい!!運命の日を前に、父の墓参りを終え、W杯ブラジル大会への思いを新たにした大久保

 6月に開幕するW杯ブラジル大会に出場する日本代表メンバー23人が、12日午後2時から発表される。大逆転でのメンバー入りを狙うFW大久保嘉人(31=川崎F)は61歳で他界した父・克博さんの一周忌に運命の日を迎える。11日には故郷・福岡の墓前に手を合わせて、近況を報告。亡き父との約束を胸に刻み、ブラジルへの思いを新たにした。

 運命のW杯メンバー発表を翌日に控え、大久保が故郷・福岡にある克博さんの墓前に手を合わせた。目をつぶり約30秒。「いよいよ明日やね。どうなるんやろね」と心の中でつぶやいた。「お父さんもどうなるか心配してくれていると思う。いい報告ができればいいけど、これだけは分からない」。昨季26得点を挙げて自身初の得点王を獲得。今季も8得点で得点ランクの日本人首位に立っており、やるべきことはやった自負はある。

 2大会連続のW杯は一度は完全に諦めていた。全4試合に先発した10年南アフリカ大会直後の8月。16強進出に貢献して完全燃焼し、ボールを蹴ることも走ることもできなくなった。原因不明の倦怠(けんたい)感。大学病院で診察を受けた結果は「オーバートレーニング症候群」だった。時を同じくしてW杯で負傷した左膝を手術。精神的にも肉体的にも疲弊し、長崎県の東シナ海に浮かぶ五島列島の宇久島で療養していた時期もある。

 同年9月4日に開催されたW杯後初の国際Aマッチ・パラグアイ戦は島で生活中にテレビ観戦したが、完全に人ごと。どん底から引き戻してくれたのも、やはり克博さんだった。電話で「代表はもういいわ」と伝えると「お前はバカか!」と怒声を浴び、遺書にも「日本代表になれ 空の上から見とうぞ」と記されていた。「あんな言葉を残しているとは思わなかった。あの言葉を見てW杯への思いが強くなった」。W杯のピッチに立つことは94年米国大会を2人でテレビ観戦した時からの親子の夢だ。連続出場で父の期待に応えたい。

 メンバーに選ばれれば控えもいとわない。「若い時なら試合に出られなくてクソッと思うかもしれないけど、そんな年じゃない。チームのために何でもする」。10年W杯の決勝トーナメント1回戦パラグアイ戦の延長戦突入前にサブだった中村俊が献身的に水を配る姿は目に焼き付いている。

 父の一周忌がXデーと重なるのはまさに運命。W杯デビュー戦となった10年6月14日のカメルーン戦開催日に姉に長女が誕生し、平成22年2月22日に自身が次男を授かるなど特別な日に何かが起こることは多い。「これだけ騒いでくれて選ばれなかったら、どんな顔をしていいか分からないけど、どんな結果でも笑っていたいね」。故郷を後にする際の表情は、最愛の父が眠るこの日の福岡の空と同様に驚くほど晴れやかだった。

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2014年5月12日のニュース