Ｗ杯１次Ｌ日本と同組ギリシャのエース・ミトログル危険な点取り屋

昨年１１月、W杯欧州予選・プレーオフ第２戦のルーマニア戦で得点し、コーナーポールをバズーカ砲に見立てて喜ぶミトログル

　ギリシャのエースは殺し屋兼救世主？欧州主要リーグの冬季移籍期間最終日となった１月３１日、ギリシャ代表のＦＷコンスタンティノス・ミトログル（２５）がオリンピアコスからフルハムに移籍した。そのワイルドな風貌とゴールを決めた後に銃を撃つポーズから“殺し屋”の異名を持つ大型ストライカーは、プレミアリーグ最下位チームの“救世主”となることを宣言した。

　身長１メートル８８の巨漢。両腕には入れ墨。そして銃撃。マフィアではない。日本がＷ杯ブラジル大会１次リーグで対戦するギリシャ代表のエースＦＷミトログルだ。得点した後に銃を撃つパフォーマンスから付いたあだ名が、スペイン語で殺し屋、ガンマンなどを意味する「ピストレロ」。ギリシャ人選手最高となる移籍金１１００万ポンド（約１８億３７００万円）で加入したのはプレミアリーグ最下位に沈むフルハムだった。

　「プレミアに移籍できて本当にハッピー。俺がここに来たのはクラブの目標達成を助けるためだ」。クラブの目標は９８～９９年以来となる２部降格の回避。つまり救世主になることを宣言した。その自信の裏付けとなる結果は、大舞台で残してきた。昨年１１月のＷ杯欧州予選プレーオフでルーマニアを相手に２試合３得点を挙げ、２大会連続本大会出場の立役者となった。クラブでは昨年１０月の欧州ＣＬアンデルレヒト戦で同大会ギリシャ人初となるハットトリックを記録。移籍先候補に名前が挙がっていたアーセナルのベンゲル監督も「フィジカルと得点感覚とを併せ持つ本物のストライカー」と高く評価している。

　長身を生かしたヘディング、左足の強烈なシュートだけでなく、利き足ではない右足でも得点を奪える万能型。そのルーツは幼少期に移住したドイツで、ボルシアＭＧの下部組織などで技術を磨いた。だが、０７年にオリンピアコス加入後は伸び悩んだ。０８年にはバルベルデ監督の指示を無視してＰＫを蹴って失敗。その後は出場機会が激減し、２度の期限付き移籍も経験した。それでも、「困難な状況でも毎日成長しようと努力してきた」とはい上がってきた。１１～１２年にはリーグＭＶＰ。雌伏の時を経てクラブ、代表ともにエースへと成長した。

　「Ｗ杯まではまだ時間があるが、努力し続けて好調をキープしたい。ギリシャのためにベストを尽くす」と新天地イングランドでのステップアップを目指す。その第一歩は９日のマンチェスターＵ戦。前節ベンチ外だった日本代表ＭＦ香川と“Ｗ杯前哨対決”が実現するかは微妙だが、昨季王者を相手にあいさつ代わりのデビュー弾を狙う。

　≪今冬、降格危機の英フルハム移籍≫ミトログルはもっと大きなクラブに移籍する可能性もあった。ＦＩＦＡ公式サイトによるとアーセナル、リバプール、ドルトムント、インテル・ミラノ、ベンフィカなどが獲得に乗り出しており、残留を争うチームを選択したことを「予想外。サプライズ」と伝えた。本人は「フルハムは死に物狂いで自分を獲りにきてくれた」とクラブの格よりも、必要とされていることを選択の理由に挙げた。

　▼コンスタンティノス・ミトログル（Ｋｏｎｓｔａｎｔｉｎｏｓ　Ｍｉｔｒｏｇｌｏｕ）
　☆生まれ　１９８８年３月１２日、ギリシャ・カバラ生まれの２５歳。幼少期に家族とドイツへ移住。
　☆サッカー歴　ドイツのデュイスブルク、ボルシアＭＧの下部組織出身。０７年にＵ―１９欧州選手権で得点王に輝き、ギリシャを準優勝に導く活躍が認められて、同年オリンピアコスと契約。１１年にパニオニオス、１１～１２年にアトロミトスに期限付き移籍。
　☆長期契約　フルハムとの契約は４年半で、年俸は推定２５０万ポンド（約４億２０００万円）。英報道によると移籍金１１００万ポンドはギリシャ人選手、クラブ史上ともに最高額。
　☆個人賞　１１～１２年に期限付き移籍したアトロミトスで２８試合１６得点と活躍し、ギリシャリーグＭＶＰ。１２～１３年ギリシャ杯得点王。
　☆サイズ　１メートル８８、８６キロ。利き足は左。