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「個」で通用したのは本田のみ 見せつけられたアジアと世界の差

[ 2013年6月16日 13:51 ]

<日本・ブラジル>前半、ダヴィド・ルイス(右)と競り合う本田

コンフェデレーションズ杯 日本0―3ブラジル

(6月15日 ブラジリア)
 W杯を1年後に控えるブラジルで行われたサッカーのコンフェデ杯。開幕戦で開催国ブラジルと対戦したザックジャパンは、力の差をまざまざと見せつけられ、0―3で完敗した。元ジェフ市原強化部長で、スポニチ本紙評論家の川本治氏(61)にこの試合をどう見たのか聞いた。

 親善試合とは、やはり全然違った。個のレベルが高い強豪国の選手がちゃんとやれば、まだ日本とはかなり差がある。それを痛感させられた試合だった。

 ザッケローニ監督は、これまでのW杯予選で採用することが多かった前田の1トップから、ブラジル戦ではメンバーを少し変えてきた。試合開始当初は岡崎と本田の2トップで、いつもの4―2―3―1から4―4―2システムに変更にしたように見えたが、本田はもともと自由に動く。そういう意味では岡崎の1トップとも言えるが、いずれにしてもザッケローニ監督の思惑は最初の3分で崩れてしまった。

 失点した時間が最悪だった。前半の立ち上がり3分に相手の最初のチャンスで得点を許し、”さあやるぞ”という後半の立ち上がりにまた失点。最初の失点は簡単なシュートではないが、ネイマールはいとも簡単に決めてしまう。2失点目は川島が弾かなければいけないボールだったが、仮に1点差負けでも完敗という試合だった。後半ロスタイムの3失点目は、対応した内田が一回転して縦パスを出され、吉田がカバーに行こうとしていたが、ジョーが出てきてどうしようもなかった。
 
 ブラジルも最近はいろいろ言われていたが、開催国としてホームで戦う大会で、個の高いレベルの選手たちが一つのチームになって戦うとやはり強い。世界の強国は攻から守への切り替えがとにかく速く、ブラジルでは、あのフッキですら守備をする。ブラジルの先発メンバーには欧州で戦う選手が8人いて、来季からバルセロナに移籍するネイマールも入れると9人が欧州組。世界を知っている。ブラジルは日本のプレッシャーでボールを失わないが、日本は失う。フィジカルや技術で通用しているのは本田ぐらいだった。それではサッカーにならない。本田が言っているように「完敗」で、長友の言っているように「プロと中学生」、大人と子供ぐらいの差があった。ザックジャパンにも海外でプレーしている選手は多い。日本はアジアでほぼ頂点に君臨してもいる。だが、アジアの予選と世界は違う。移動などによるコンディション云々より、残念ながら世界のトップとの差はまだあるということだ。

 だが、W杯本大会は来月始まるわけではない。時間はまだある。ブラジル戦でも日本のチャンスがゼロだったわけではない。選手たちは世界のトップとの差を肌で感じ、次のイタリア戦でどう戦うか。そこに期待したい。

 ◇川本 治(かわもと・おさむ)1952年(昭27)5月1日、北海道釧路市生まれの61歳。室蘭清水ヶ丘高校2年までGKを務め、中大進学後以降はFWに転向。古河電工(現J2千葉)では9季プレーし、引退後はコーチ、監督、強化部長など要職を歴任。現在は日本代表戦のほか、カテゴリーを問わずスタジアムに数多く足を運び、誠実な人柄で選手や関係者からの信頼も厚い。

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2013年6月16日のニュース