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アビダル プロサッカー選手初、肝臓移植から“奇跡”の復帰!

[ 2013年4月9日 06:00 ]

長い闘病生活を乗り越えピッチに帰ってきたアビダル(左)にスタジアムから大きな拍手が送られた(右はビラノバ監督)

リーガ・エスパニョーラ バルセロナ5-0マジョルカ

(4月6日)
 昨年4月に肝臓の移植手術を受けたバルセロナのフランス代表DFエリック・アビダル(33)が奇跡の復活を果たした。6日のマジョルカ戦で後半25分から途中出場。昨年2月29日、フランス代表の親善試合ドイツ戦以来402日ぶりの対外試合復帰。公式戦出場は同年2月26日のスペインリーグのAマドリード戦以来405日ぶりだった。肝臓移植からの復帰はプロサッカーでは初。他競技を含めてもごくまれで、世界中の闘病する人々に希望を与えた。

 英雄の帰還だった。6日のホーム・マジョルカ戦。アビダルがピッチに立つと、総立ちの6万5000人から拍手と大合唱で迎えられた。試合後にはアンダーシャツに書いた「ありがとう、僕のいとこ」と肝臓提供者ジェラールさんへ感謝の言葉を披露。「大事なのは病気と闘うのをやめないこと。常に希望はある」と闘病する人々へメッセージを送った。

 専門家の見解は“復帰不可能”だった。肝臓移植から復帰したトップアスリートはスノーボードのクリス・クルーグ(米国)のみと言われ、サッカー界では前例がなかった。スペイン国立臓器移植委員会のマテサンス会長は「手術は成功し、普通の生活は送れるだろうが、復帰は極めて難しい」とコメント。その理由に「サッカーは接触が多い。移植後は患部への強度の打撲を避けるべき。拒絶反応が出るとは限らないが、一生薬(免疫抑制剤など)を飲み続けることになるし、定期検診も必要」と説明していた。

 普通の生活でも拒絶反応、合併症、感染症などの危険性がある上に、プレーをすれば接触などで新たなリスクが生まれる。それでも復帰を目指した理由は「サッカーは僕の人生そのもの。プレーせずに終わりたくなかった」。スペイン最高クラスのバルセロナクリニックでの手術や治療、チーム医師らクラブの支援、そして何より本人の1年にわたる地道なリハビリや不屈の精神が前例のない復帰につながった。

 昨年12月に唾液腺がんの手術を受けたビラノバ監督とともに、懸命に復帰を目指す姿は同僚にも感銘を与えた。MFシャビは「1日も休まずジムへ行き、午前も午後もリハビリに励んでいた」と証言。FWビジャは「ティト(ビラノバ監督)とアビダルが僕らを勇気づけ、強くしてくれた」と語った。クラブは今季終了時で切れる契約を延長する見通しで、引退後もアンバサダー就任などを要請する意向。ただし本人は「体調はとても良いので、1~3年はプレーしたい」と語っており、1年でも長い現役でのプレーを目指す。

 ▽エリック・アビダル(Eric Abidal)1979年9月11日、フランス・リヨン生まれの33歳。00年にフランス1部モナコでプロデビュー。02年リール、04年リヨンを経て、07年にバルセロナ加入。フランス代表では04年から61試合に出場。1メートル86、75キロ。利き足は左。ポジションは主に左サイドバック。

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