美南デビュー弾　新生なでしこの１８歳シンデレラ

[ 2013年3月9日 06:00 ]

アルガルベ杯１次リーグ日本１－２ドイツ

（3月8日パルシャル）
　ＦＷ田中美南（１８＝日テレ）がフル代表デビュー戦で初得点を挙げた。ＦＩＦＡランク３位のなでしこジャパンは８日、国際親善大会アルガルベ杯の１次リーグ第２戦で同２位のドイツと対戦。１―２で敗れたが、１点を追う前半１８分に田中美が一時同点とするデビュー弾を決めて今後に期待を抱かせた。２連敗のなでしこは２年連続の決勝進出は逃し、Ａ組の３位以下が決定。１１日の第３戦はデンマークと対戦し、１３日の順位決定戦は５位決定戦または７位決定戦に回る。

　その瞬間は前半１８分にやってきた。左サイドからのＦＫを競り合った大儀見が頭で落とすと、ゴール前で反応した１８歳が冷静に左足でゴール左に流し込んだ。Ｕ―１９代表候補から飛び級で招集された田中美がなでしこジャパンのデビュー戦でネットを揺らし、ガッツポーズで笑顔を見せた。

　「こぼれてきたら狙おうと思っていた。たまたま（ボールが）来て。落ち着いて蹴れました。（決めた瞬間は）マジか？って思いました。自分は今まで“持ってないね”と言われていたけど、人生で初めて“持ってるな”と思いました」

　開始７分で先制を許す展開から一時試合を振り出しに戻した。フル代表デビュー戦での得点は０６年女子アジア杯ベトナム戦で阪口夢穂が２得点して以来。佐々木監督がベストメンバーで臨むと宣言していた中での大抜てき。６日のノルウェー戦は初招集７選手の中で唯一出番がなかったが、それもドイツ戦を見据えた指揮官の配慮だった。

　胸に秘めたキーワードは「自信と責任感」だ。所属する日テレを退団して１月にドイツ２部ホッフェンハイムに移籍したＦＷ岩渕から「今年のチームは美南にかかっている。今まで以上に自信と責任感を持って」とメールを送られた。目標であり尊敬する先輩から受けた激励。惜別旅行に行くなど親友でもある岩渕は故障でアルガルベ杯を棒に振り、テレビ電話で話した際に「本当に行きたかった」と漏らしていた。無念の思いに応えるべく、田中美が選ばれた者の責任をピッチ上で体現。昨夏のＵ―２０Ｗ杯準決勝で０―３と完敗し、自身も前半２５分で屈辱の交代を強いられたドイツ相手に「負けたくない」という思いを爆発させた。

　なでしこでは１４人目となる初出場初得点。しかし、後半１０分の失点で敗れた。「点を取れたことはうれしいけど、負けてしまったので悔しい。課題はいろいろ出たので修正していきたい」。連覇が懸かる１４年Ｗ杯カナダ大会に向けて若手の底上げを図った大会で誕生したニューヒロインは、さらなる成長を誓った。

　≪欧州相手では史上４人目≫国際Ａマッチ初出場のＦＷ田中美が前半１８分に同点ゴール。Ａマッチデビュー戦での初ゴールは０６年７月１９日・ベトナム戦での阪口以来、７年ぶり史上１４人目。欧州勢相手からは９４年の大竹奈（スロバキア戦）、森本（オーストリア戦）９９年の小林弥（フランス戦）に次いで４人目だ。

　【田中美南アラカルト】
　☆生まれ　１９９４年（平６）４月２８日、タイ生まれ日本育ちの１８歳。
　☆サッカー歴　兄の影響で小１の時に川崎ウィングスＦＣでサッカーを始め、日テレ・メニーナから昨年、日テレ・ベレーザに昇格。昨夏のＵ―２０女子Ｗ杯では６試合４アシスト。
　☆趣味　寝るのが大好きで、夜に９時間寝て、さらに昼寝４時間ということも。
　☆好物　パスタ、ご飯など炭水化物命！「パスタは大盛り２杯いきます。たらこパスタだとテンション上がる！」。タイ人の母が作るグリーンカレー、ナミョン、カニヨンなどのタイ料理も好き。
　☆好きなタレント　竹野内豊（４２）、市原隼人（２６）とイケメンが好み。「イッチー（市原）は笑うと可愛い」。
　☆尊敬する人　岩渕真奈（１９＝ホッフェンハイム）と猶本光（１９＝浦和）。「２人とも一緒にいると学ぶことが多い」
　☆家族　父・典生（のりお）さん（５６）、タイ人の母・チャリンダさん（４８）、兄・恵祐（けいすけ）さん（２１）。
　☆血液型　ＡＢ。
　☆利き足　右。
　☆サイズ　１メートル６３、５４キロ。