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“商業的補強”の声も…欧州初の侍トリオはもろ刃の剣!?

[ 2013年1月29日 06:00 ]

デサール強化部長(右)からユニホームを手渡されて笑顔を見せる永井

 ベルギーの名門スタンダール・リエージュで日本人トリオが結成された。昨夏にリールセから加入したGK川島永嗣(29)に続いて、今月にFW永井謙佑(23)が名古屋から、FW小野裕二(20)が横浜から移籍。欧州の同一クラブに日本人3選手が在籍するのは初めてとなったが、その裏には剛腕で知られるワンマンオーナーの思惑が浮かび上がってきた。

 名門スタンダールで守護神を務める日本代表GK川島が「こういう形で同じチームでやれるのはうれしいこと」と喜んだ永井と小野の加入。欧州で初めてとなる日本人トリオ結成について、デサール強化部長は「偶然の産物」と明かした。今冬の補強ポイントはFWで、まず昨夏のロンドン五輪で日本を4強に導いた永井に注目して調査を開始。「永井を追ってJリーグを見ているうちに、ユウジ(小野)を見つけた。彼も獲れるかどうか可能性を探るようになった」と説明した。川島には2人の特徴やプレースタイルなどについて聞き取りを行い、さらに永井については日本代表で接点があったということで直接連絡を取ってもらうなど協力してもらったことが、獲得成功につながった。

 25日のコルトレイク戦で、小野が途中出場でデビューを飾った際に大きな拍手と歓声で迎えられたように、日本人選手に対するサポーターの反応は好意的だ。その一方で一部には疑問の声も存在する。批判の矛先は選手の実力ではなく、補強の決定権を持つドゥシャトレ・オーナー。デサール強化部長が「商業的な補強ではない」と強調するのは、オーナーの“商業第一主義”に対する批判があるからだ。

 11年に名門を買収した同オーナーは電子部品製造業などで財をなしたやり手のビジネスマンで、昨年12月にはベルギーリーグを脱退してオランダとの新リーグ構想やフランスリーグ参戦をぶち上げて物議を醸すなど、剛腕、ワンマンぶりでサポーターの反感を買っている。日本人3人の獲得にGOサインを出したのは、スポンサー獲得など日本をはじめアジアでのビジネス拡大を狙ったという見方もあり、もし結果を残せなければ「やはりオーナーがお金のために獲った選手」と見られて必要以上のバッシングを浴びる危険性がある。

 クラブはベルギーでは名門だが、年間予算は約2000万ユーロ(約24億円)とJリーグの中堅クラブ並みと少ない。その中で小野と永井の獲得には年間予算のおよそ1割に当たる約2億円がかけられており、4位から逆転Vを望むサポーターの期待だけではなく、剛腕オーナーからは“大型投資”に見合う活躍が求められることになりそうだ。

 ▽スタンダール・リエージュ 1898年にベルギー東部のリエージュをホームに創設。リーグ初優勝は1958年で、69~71年に3連覇など躍進。リーグ制覇10回は4番目、ベルギー杯優勝6回は3番目に多い名門で、アンデルレヒト、クラブ・ブリュージュとともにベルギーのビッグ3と称される。今季はここまでレギュラーシーズン4位。16チーム中6位までがプレーオフに進出する。ホームスタジアムはモーリス・デュフラン(2万9388人収容)。

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