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沢、現役引退も…銀メダル胸に「悔いなくやりきれた」

[ 2012年8月11日 06:00 ]

<日本・米国>試合終了後、ワンバックと抱き合う沢

ロンドン五輪 サッカー女子決勝 日本1-2米国

(8月9日 ロンドン)
 サッカー女子のなでしこジャパンは9日の決勝で米国に1―2で敗れた。0―2からFW大儀見優季(25=ポツダム)のゴールで反撃したが、及ばなかった。女子W杯で優勝した翌年に五輪を制覇する史上初の偉業は逃したが、男女を通じてサッカーで初の銀メダルを獲得。大きな勲章を手にしたエース沢穂希(33=INAC神戸)は五輪を区切りに日本代表を引退する方向で、今季限りで現役を退く可能性も浮上した。なでしこジャパンは11日に帰国する。

 20年の片思いがようやく実った。五輪女子サッカー史上最多となる8万203人の大観衆の前で、代表デビューした93年から抱き続けた夢がかなった。沢は首にかけられた銀メダルをいとおしそうに触った。

 「輝く金メダルは獲れなかったけれど、悔いなくやりきれた。代表に入ってからずっと目標にしてきた五輪メダル。W杯の優勝と同じぐらいの重みがある」。終了直後、涙にくれる宮間や田中らを抱きしめ、少しだけ目を潤ませた。観客席の母・満寿子(まいこ)さんに駆け寄り首に銀メダルをかけて感謝を伝えた。

 大舞台で執念が実った。2点を追う後半18分、大野のパスを受けるとすかさずシュート。そのはね返りに詰めると、足に当たったボールを大儀見が押し込んで1点差にした。その後も決定機を積み重ねた。ボールキープ率は58・0%と圧倒。前回王者を追い詰めた。「ゴールネットは揺らせなかったけれど、チーム全員もう1点取るつもりだった」。敗れはしたが、充実感があった。

 どんなときも弱音を吐かなかった。日テレや日本代表で同僚の原歩さん(33=C大阪レディースコーチ)は「同じ日本人で弱音を吐ける選手はいなかったんだと思う」。良性発作性頭位めまい症発症時も泣き言を口にしなかった。米国のワンバックは「国民からの期待も責任も全て背負う。米国に女子サッカーを認知させたミア・ハムと同じ」と女子サッカーのスター選手を引き合いに出し沢にかかる重圧を表現した。15歳で初めて日本代表に選ばれ常に先頭を走ってきたが、立ち止まる日が近づいている。

 親しい関係者に「4年後は絶対にない」と話しており、五輪は4度目のロンドンが最後。次の主要大会は3年後のW杯。佐々木監督には「沢は復活だよね。まだまだできる」と言われたが、今後の代表活動について「ノープランです」と白紙を強調。初のメダル獲得を区切りに代表を引退する可能性が高い。

 INAC神戸との契約は今季終了時で切れる。友人も多く生まれ育った東京に戻りたい希望が強い。移籍の選択肢もあるが、代表は大きなモチベーションとなってきただけに、それに替わるものが見つからなければ、今季限りで現役を退くことも十分考えられる。

 「最後に米国と、戦友のワンバックと戦えて楽しかった」。なでしこ最後の一戦になるかもしれない90分。09、10年に米国女子プロリーグのワシントンで一緒にプレーした米国のエースとの対戦を堪能した。銀色の恋が成就した日本のエースは少女のような笑顔を浮かべて聖地を去った。

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