×

おかえり!沢 53日ぶりピッチで思わず涙…

[ 2012年4月23日 06:00 ]

<福岡・INAC神戸>復帰を果たし、試合終了後に感極まり涙ぐむ沢(左)

なでしこリーグ第2節 INAC神戸7―0福岡AN

(4月22日 レベスタ)
 なでしこジャパンの顔が53日ぶりにピッチに戻ってきた。
【日程&結果 順位表】

 良性発作性頭位めまい症で戦列を離れていたINAC神戸のMF沢穂希(33)が22日、福岡AN戦で後半27分に途中出場。同36分のFW大野忍(28)のゴールを引き出すなど、チームの開幕2連勝に貢献。試合後に感極まった日本のエースは苦悩の時を乗り越え、ロンドン五輪へ向け再スタートを切った。

 その瞬間、スタジアムを万雷の拍手が包んだ。後半27分、コールされた「沢穂希」の名前。京川と代わってピッチに足を踏み入れると、3500人を集めた観客席、さらに相手の福岡ANの選手からも祝福の拍手が湧き上がった。

 「アウェーだったけれど、ブーイングじゃなくて拍手で迎えてくれて…。選手として本当にうれしかった」

 2月29日のアルガルベ杯ノルウェー戦以来53日ぶりの復帰戦。出場は18分間だったが、実に28回もボールに絡んだ。後半36分。中央付近でボールをもらうと南山へパスを出した。そこから中島、近賀を経由し、最後は大野がゴール。この日の7点目が入った。38分にはゴールキックを頭でクリアした。「W杯の決勝より緊張する」。いつものドヤ顔は封印。ちょっぴり、しおらしく肩をすくめていた。

 ポルトガル遠征中の3月4日、立っていられないほどのめまいに襲われた。吐き気もあった上に異国の地でははっきりとした診察結果が出ず不安は募った。試合会場にも行けずに宿舎で待機。後輩たちが日の丸を背負って奮闘する姿すら見られなかった。病状を説明できず、あらぬ憶測も飛び交った。何も信じられない心境だった。

 帰国後には3軒の病院を回った。投薬治療などでめまいの回数は減ったが、室内で支障のない程度のトレーニングに限定される毎日。ボールを蹴れるようになるまで約1カ月を費やした。もどかしい思いはぬぐいきれず神戸市内の自宅周辺で報道関係者に待ち伏せされることもあったという。15日の開幕戦もベンチを温め、公の場では「五輪メンバー18人に残るのは厳しい」と漏らすなど、精神的にも追い込まれていた。

 それでもサッカーだけは嫌いになれなかった。試合後、「サッカーができるのは当たり前じゃない。サッカーができる喜びを感じました」と語ると、目頭を押さえた。支えてくれた監督、家族、同僚に恩返しするのは五輪本大会でピッチに立つこと。リーグ戦で結果を残し、6月のスウェーデン遠征のメンバー入りする復活ロードは敷かれている。「みんなに迷惑をかけた分、フィールドで恩返ししたい。ロンドンでしっかり結果を出したい」。どん底を味わった大黒柱の表情がぐっと引き締まった。

続きを表示

この記事のフォト

2012年4月23日のニュース