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沢ママも歓喜「メッシさんと一緒に受賞できるなんて…」

[ 2012年1月11日 06:00 ]

国際サッカー連盟の世界年間最優秀選手に選ばれ、アルゼンチン代表のメッシ(右)と握手する日本代表の沢穂希

FIFA2011年間表彰式

 眠気は少しも感じなかった。辺りが静まりかえった午前4時前。府中市内の自宅で母の満寿子(まいこ)さんはテレビの前にくぎ付けになっていた。ついに訪れた受賞の瞬間「HOMARE SAWA」のアナウンスが響く。画面に映る振り袖姿の愛娘を確認すると、一気に緊張から解き放たれた。

 「聞いた瞬間は涙が出そうでした。親としてはこれ以上にうれしいことはないです。メッシさんと一緒に受賞できるなんて素晴らしいこと。これまで頑張ってきたことへの、素晴らしいご褒美ですね」

 激動の11年が走馬灯のようによみがえる。涙腺も緩んだ。大事な大会前は必ず地元の高幡不動尊に足を運び、海外遠征中はメールで心を通わせた。5度目のW杯で初めて決勝進出を決めると、その雄姿をひと目見ようと急きょ、ドイツにも飛んで行った。9月の五輪最終予選では日本に残ったが、左手の指にネイルアートを施して願掛けした。離れていてもいつも一緒に戦ってきた。

 思えば、沢のサッカー人生は満寿子さんとの二人三脚だ。おなかの中にいる頃から皮膚に足形が浮かび上がるぐらいのキック力で周囲を驚かせた。「負けず嫌いは私に似たのかも。弱音は絶対に吐かない」と言う。スポーツ少年団では男子に交じり、泥んこになってプレーした。帝京大を中退し、単身で米国に渡ったときは「一瞬、反対しようと思った」が、最後は沢の意思を尊重した。それが母の優しさであり、強さだった。

 すでに新たな戦いも始まっている。サッカー界でもっとも権威ある賞を手にし、今後は名実ともに追う立場から追われる立場に変わる。今夏には女子サッカー界ではW杯以上の注目を集めるロンドン五輪が待つ。満寿子さんも渡英する予定で、積み立ても開始している。「この賞を今後の励みに頑張ってほしい」。11日、帰国する愛娘に、温かなメッセージを送っていた。

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2012年1月11日のニュース