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なでしこが伝説に…沢3冠「みんなで獲ったタイトル」

[ 2011年7月19日 06:00 ]

<日本・米国>トロフィーを掲げ喜ぶ沢(中央)ら日本イレブン

女子W杯決勝  日本2―2米国(PK3―1)

(7月17日 フランクフルト)
 死闘を制して、なでしこジャパンが世界の頂点に立った。17日の決勝でFIFAランク1位の米国を2―2のPK戦の末に3―1で撃破。MF沢穂希(32=INAC)が1―2の延長後半12分に値千金の同点弾を決めて勝利の立役者となった。今大会5得点を挙げ、優勝、得点女王、MVPの3冠を達成。“クイーン”が、日本をサッカー史上初の世界タイトルへと導いた。

 最高のフィナーレだった。笑顔の沢が優勝カップを掲げると、金の紙吹雪が舞い、4万8000人の大観衆をのみ込んだスタジアムが揺れた。宮間が歓喜のダンスを踊り、海堀が雄叫びを上げる。PK戦までもつれた死闘を制して、日本サッカー史上初の世界タイトルを獲得。優勝、得点王、MVPの3冠を達成した沢は「本当に、もう、サッカーの神様がいました。苦しい時代も知っているだけに、本当に…。何か、今はもうよく分からないです。うれしいというか、まだ実感がない」と声を震わせた。

 崖っ縁のチームを救ったのは、やはり沢だった。1―2の延長後半12分、宮間の左CKに反応。ニアサイドに走り込み、ジャンプしながら右アウトサイドでネットを揺らした。「ニアでヘッドで行こうとしたのが、あの結果。最初は自分でもゴールに入ったのを気付かなかったんですけど、みんなの思いが込もった得点だった」。ハットトリックを達成した1次リーグのメキシコ戦で、自身2得点目を決めた時と同じ得意のパターン。CKの直前には宮間から「ニアに蹴るから」と耳打ちされており、仲間を信じて突っ込んだ結果、今大会5得点目が生まれた。

 現在も最年少記録として残る15歳での日本代表デビューから18年。トップに君臨し続けることができたのは抜群の運動能力と負けん気の強さがあったからだ。08年北京五輪後には府ロクサッカー少年団時代の友人に誘われて初めてダーツに挑戦。1ゲーム目は友人に完敗したが、沢は「もう一回、もう一回」と勝つまで勝負をやめようとしなかった。結果的には10ゲーム目で、そのダーツ店開業以来の女性最高点をマークして友人に快勝。最後まで勝負を諦めない姿勢は世界舞台でも小金井市内のダーツ店という舞台でも同じだった。

 集大成と位置づけて臨んだ自身5度目のW杯(前進の世界選手権含む)で、有言実行の世界制覇。大会前には「最後のW杯になると思う」と語っていたが、試合後、母・満壽子(まいこ)さんに「今が一番、体が動く。4年後も大丈夫かもしれない」と15年W杯カナダ大会出場に意欲を見せた。6大会連続W杯出場は前人未到で、実現すればギネス記録にもなる。「優勝して、得点王、MVPもいただいて、本当に予想していなかった。チームメート、監督、みんなで獲ったタイトルだと思う。たくさんの人に感謝してます」。劇的試合の連続で世界に強烈なインパクトを残した22日間。なでしこジャパンが、沢が、ドイツの地で伝説となった。

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