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東北パワーで連勝!仙台2位浮上 太田気迫ヘッド

[ 2011年4月30日 06:00 ]

<仙台・浦和>前半40分、頭で先制ゴールを決める仙台・太田(左)

J1第8節 仙台1―0浦和

(4月29日 ユアスタ)
 仙台がプロ野球の楽天に負けじと本拠地開幕を白星で飾った。東日本大震災後初のホームゲームで浦和を1―0で下し、2連勝で2位に浮上。前半40分にFW太田吉彰(27)が2戦連続で挙げた先制点をチーム一丸で守りきった。地震の被害から補修された本拠地ユアスタには1万8456人が集結。大サポーターの後押しを受けJ2時代を含め過去の公式戦で3分け8敗だった浦和を初めて撃破した。
【試合結果】

 東日本大震災を乗り越えて復旧した本拠地「ユアテックスタジアム仙台」に勝利の歌が響き渡った。震災のあった日から数えて50日目に手にしたホーム開幕白星で2連勝。仙台イレブンは場内を1周しながら、スタンドを金色で染めたサポーターと喜びを分かち合った。23日の川崎F戦でうれし涙を流した手倉森監督は「きょう集まってくれたサポーター、来られなかった人たちの思いを全部力に変えて選手は勝利をつかんでくれた」と満面の笑みを浮かべた。

 乗っているFW太田がまた決めた。前半40分にMF梁勇基の右クロスをDF2人の間で競り勝ち、頭でゴール左に押し込んだ。過去3年は無得点だった男が23日川崎F戦での起死回生の同点弾に続く2戦連発。リーグ通算23点のうち頭での得点は磐田時代の06年11月11日のC大阪戦以来2点目で「頭で決めるのは珍しい。みんなの力で決めたゴール」。震災の影響で退団したFWマルキーニョスの穴を埋める活躍にも「マルキがいなくなってチーム一丸にならないと点は取れない。たまたま僕が取っただけ」と控えめに話し「これだけのサポーターがあれだけの声援をくれた。選手は負けられなかった」と気迫の勝利を強調した。

 3月11日に体験した大地震がチームの意識を変えた。同28日には支援活動を行った石巻市で被害の大きさを目の当たりにし、MF関口は「サッカーができることは当たり前じゃない。感謝しながらプレーしている」。川崎F戦で決勝ゴールを決めたDF鎌田は「東北の力を示さないといけない。去年までとは気持ちが違う。残留争いなんかしてる場合じゃない」と2連勝にも満足する様子はなかった。

 川崎Fを敵地で初めて破ったのに続き、今度は浦和を公式戦で初めて撃破する快進撃。楽天とともに仙台で開幕白星を飾り、手倉森監督は「勝つことで確実に復興へ進んでいることを示せたし、Kスタ、ユアスタから被災地にパワーを送れたと思う。東北の人間にはパワーがあるんだと感じてもらって、東北の人たちと町を取り戻すまで一緒に前に進んでいきたい」。復興のシンボルとして、ベガルタは連勝街道を切り開く。

 ≪狙い通り完封≫スピードのある浦和攻撃陣の対策として、4人の中盤と4バックが2列のブロックを作って無失点に抑えた。後半41分にマルシオ・リシャルデスのヘディングシュートをクリアしたDF鎌田は「スペースを与えるなと(手倉森)監督から言われていた。狙い通りだった」と話した。GK林も「ラインコントロールもうまくできたけど、最後の球際もしっかりやれた」と気持ちを込めたディフェンスに手応えを感じていた。

 ≪ビデオで激励≫ハーフタイムにはかつて仙台に所属した選手からのビデオメッセージが流された。広島の元日本代表FW佐藤は「一緒に戦って、乗り越えていこう」とサポーターに呼び掛け、大宮のDF村上は「(ホームゲームの)再開を迎えられたことをうれしく思います」と喜んだ。他にも元日本代表MF森保(現新潟コーチ)、元日本代表DF小村氏らが激励の言葉を寄せた。

 ≪ファン感涙…≫ユアスタのスタンドでは浦和戦の勝利に思わず涙するサポーターの姿もあった。震災で知人の多くを亡くしたという宮城県石巻市の自営業武山ひろ江さん(51)は「今まで我慢するのが当たり前の生活を送っていた。応援をしながら、どんどん気持ちが楽になっていった」と感慨深げ。スタジアムでアルバイトをしている仙台市の大学4年生安西美晴さん(22)は「これから普通の生活に戻り始めていく、そんな日だと思う」と、笑顔で「4・29」を言い表した。

 ≪柳沢募金活動≫今季から仙台に加入した元日本代表FW柳沢が募金活動を行った。試合前にチームメートのFW大久保、JFLのソニー仙台の選手とともに支援を呼びかけ「みんなが頑張ろうという思いで努力してきた。それが今ここに集結している」とホームゲームが開催されたことを喜んだ。左膝を手術したためにベンチ入りできなかったが「(試合に出たくて)うずうずした。早くそういう時が来るようにしたい」と早期復活を誓った。

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