×

「食べて」と差し出されたパン…仙台エース、宮城に恩返しを

[ 2011年4月24日 09:20 ]

<川崎・仙台>ドリブルで突破する仙台・関口

J1第7節 仙台2-1川崎F

(4月23日 等々力)
 仙台の副将の元日本代表MF関口訓充(25)が復興への思いをつづった手記をスポニチに寄せた――。

  ×  ×  ×  

 勝てて本当に良かった。最後はみんな足がつっていたけど、諦めない気持ち、執念が逆転につながったと思う。この勝利が被災地に届いて、希望や勇気を与えられればうれしい。サポーターにあいさつに行ったときは正直泣きそうだった。でもここで流す涙じゃない。優勝争いをして今季が終わった時に泣きたい。

 3月11日の大震災直後はサッカーのことは考えられず、生きるのに精いっぱいだった。電気、ガス、水道が全部止まって、食料を買うためにスーパーに1時間以上並んだ。そんな状況で「このパン食べていいよ」と貴重な食料を差し出してくださる方もいた。いただかなかったけど、気持ちは本当にうれしかった。

 3月29日にJリーグ選抜として慈善試合に出場した時は、仙台コールや自分への応援を聞いて、本当にうれしかった。ゴールを決めたカズさん(J2横浜FC三浦知)とサッカーが持つ力について話すことができたし、満男さん(鹿島・小笠原)から実際に被災地を訪れた体験を聞いて、支援で協力していこうという話もした。次の日、仙台に戻ってから子供へのお菓子を持ってアポ無しで避難所を訪問した。サイン会をして一緒にサッカーをして、子供たちの笑顔から逆に元気をもらった。津波の被害を受けた被災地は街がなくなっていた。信じられない光景を見たときは本当につらかったし、何もできない自分が情けなかった。でも現実から逃げずに受け止めて、少しずつでも自分ができることをやってきた。絶望から始まって一歩ずつ光が見えてきた43日だった。

 川崎F戦から履いたスパイクに自分の思いを書き込んだ。両足のかかとに「絆」。左足に「一人じゃない 信じよう 希望の光を!」。右足に「共に歩み 未来に向かって」。みんなに一人じゃないってことを分かってほしいし、ピッチの自分も一人で戦っているんじゃない。今までは自分のためにプレーしていた部分もあったが、今年からは違う。被災されたみんなの分まで頑張るし、避難所で出会った人たちの思いを背負ってピッチに立つ。次はホーム開幕。浦和に勝って、また宮城のみんなを笑顔にしたい。(仙台MF関口訓充)

 ◆関口 訓充(せきぐち・くにみつ)1985年(昭60)12月26日、東京都生まれの25歳。帝京高から04年に仙台に入団。高速ドリブルが武器で、昨年10月にA代表に初招集された。1メートル70、64キロ。

続きを表示

2011年4月24日のニュース