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優勝確率は50%以上…名波浩氏が見た日本の成長と課題

[ 2011年1月23日 11:19 ]

<日本・カタール>前半、頭でパスを出す香川(左から2人目)

アジア杯準々決勝・日本3-2カタール

(カタール・ドーハ)
 日本が劇的勝利で4強入りを決めたカタール戦。全3得点に絡む活躍を見せたMF香川真司(21=ドルトムント)が復活した要因や、劇的勝利で見逃されがちな今後の課題は何か。テレビ朝日の解説で現地でザックジャパンを密着取材している00年アジア杯レバノン大会MVPでスポニチ評論家の元日本代表MF名波浩氏(38)が分析した。

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 短期決戦のカップ戦では結果オーライの部分もある。その意味で、数的不利の劣勢をはね返しての勝利の持つ意味は大きい。後半16分に吉田が退場して10人になってからの戦い方は、我慢しなければいけない時間帯をしのいで、ここ一番で力を使って前に出て行くという意思統一ができていた。決勝ゴールの起点となった長谷部が出した香川への速い縦パスは象徴的なプレー。こぼれ球を拾ってからの判断の速さもパススピードもワールドクラスだった。

 カタールが数的優位になった後、戦術を変えなかったこともプラスに働いた。日本は1点リードを許していただけに、空いた選手を使われてゆっくりとボールを回され、時間を使われれば苦しかった。だが、相手はロングボールを多様する攻撃を続けてくれた。ルーズボールが多発したことで、日本はボールを奪取する機会が増えて10人でもチャンスをつくることができた。10対11の状況になった後のゲームプランの違いが劇的勝利につながったと思う。

 トータル的に見れば反省材料や課題も少なくない。出場停止が明けて2試合ぶりに先発復帰した川島は角度のない位置からの直接FKで失点。ミスと言えば言い過ぎかもしれないが、壁が1枚(香川)だけだったのは気になった。ゴール前には相手5人が入ってきたが、マークの人数は十分に足りていたし、壁にもう1枚割いても良かったと思う。試合後にザッケローニ監督とグイードGKコーチが話し込んでいたのも、そのことかもしれない。

 退場した吉田は2枚のイエローカードをもらうべくしてもらった。全体的に判定はカタールに寄っていたが、中東では当たり前だし、W杯予選でも同じようなシチュエーションは出てくる。2度目に警告を受けたシーンは完全なファウルだったし、若さが出てしまった印象。右サイドバックで先発した伊野波もオン(ボールを持った状態)オフ(ボールのない状態)のプレーの質はともに出場停止の内田に比べて悪く、ノッキング状態(ギクシャクした動き)に陥っていた。前田も相手に研究されて相手に挟み込まれる場面が目立ち、前線でボールを収められなかった。修正点は多い。

 手放しで喜べる内容ではなかったが、やはり香川が結果を出したことは大きい。1次リーグ3試合に比べて相手の背後を突く動きの質と量が上がっていた。岡崎が中盤や最終ラインからの長いボールに反応して一発で裏を狙う動きを得意とするのに対して、香川はくさびのパスなど1クッション入ってから誰かが空けたスペースに飛び出すのが特徴だ。ボールが来ない場面でも連続性ある動きを繰り返したことで、ゴール前で前を向いてボールを受ける回数が増えた。

 ファーストタッチを置く場所も今までの試合で一番良かったし、左足で決めた2点目はGKの体重移動をよく見ていた。1次リーグでは結果が出ず、自分の何が悪いのかという答えも見えずトンネルに入り込んでいたが、カタール戦後は今大会では見られなかった良い顔をしていた。試合後は“楽しかったです”とハイタッチを求めてきたし、もう吹っ切れたんじゃないかな。

 勢いの出る勝ち方だったし、個人的に優勝確率は50%以上あると予想する。準決勝以降は相手のレベルが格段に上がり、日本の現在値を測るものさしとしても貴重な戦いになる。個々のコンディションをいかに保つかと、相手に研究された中で自分たちのスタイルを貫けるかどうかが、2大会ぶりのアジア制覇に向けたポイントになる。

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2011年1月23日のニュース