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日本の課題は「点取り屋と守備の要」の育成

[ 2010年7月12日 13:05 ]

 【西野朗氏のスペシャル興奮観戦記 ドイツ3-2ウルグアイ】両チームともにメンバーが欠けていたが、良さが凝縮された試合だった。ともに今大会の集大成と位置づけて3位にこだわり、積極的に攻めていたが、ドイツが勝ったのは攻撃のオプションの多さだった。

 先制点はミドルシュートのこぼれ球、2点目は相手の守備を崩し、3点目はセットプレー。もともと得点力があるチームではなかったが、今大会は多彩な形で点を取っていた。システムもかつての4―4―2から4―2―3―1に変えたが、トップをサポートする2列目の選手の攻撃センスがうまく生かされていた。レーブ監督もエジルをトップ下で我慢強く使うなど、選手のキャスティングがシステムにうまくマッチしていた。

 一般的にこのシステムではワイド(中盤のサイド)の位置にはスピードがあってドリブルのうまい選手を置くことが多い。しかしドイツはゴール前でも仕事ができるミュラーやヤンセンを起用。2点目は1メートル90のヤンセンがゴール前で相手に圧力をかけて決めた。サイド攻撃だけでなく、中でエジルが引きつけてスルーパスなどで変化をつけられるし、ミュラーやヤンセンが決める形もある。バリエーションも多くなり、結果的に攻撃が厚くなった。

 ドイツは優勝候補といわれながら、準決勝のスペイン戦で自分たちのスタイルのサッカーができなかった。選手も最後の試合でパスワークやカウンターなど、自分たちのらしさを出そうとしていた。若手のミュラーやエジル、カカウらがシステムの中で自分の役割をしっかり果たし、それをシュバインシュタイガーら中堅とベテランがうまく支え、いいところを引き出していた。タフさとスピリットがドイツのカラーだったが、そこにアクセントが付いた。

 今大会の上位3カ国はスペイン、オランダ、ドイツで、ともにボールをポゼッション(支配)するスタイルのチームだった。細かさ、繊細さ、ダイナミックさなどはそれぞれ少しずつ違うが、組織を整えてその中でポゼッションするところは共通している。日本が目指しているところも似ているが、最終的に点を取れるかどうかはやはり個の力が大きいことも今大会を通じて浮き彫りになったところだ。

 パスをつなげる技術や戦術は持っていても、最終的にストライカーがいないとポゼッションしたボールを生かせない。今のサッカーは組織で戦えても、組織で点は取れない。日本もW杯では現実的に考えて守備を重視したサッカーに方向転換したが、今後はストライカーとセンターバックの育成が課題になる。育成と発掘に力を注がないと何となく「いいサッカーをしている」で終わってしまう。日本人の特性からみれば、日本が目指すサッカーは間違っていない。しかし、その先を見据えないといけないこともこの大会から感じられた。(G大阪監督)

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2010年7月12日のニュース