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先制ゴールでベンチへ…本田がチームの中心になった瞬間

[ 2010年7月4日 09:43 ]

カメルーン戦の前半、先制ゴールを決めた本田圭佑(右から2人目)を祝福する日本ベンチ

 前評判を覆し、W杯南アフリカ大会で16強入りを果たした岡田ジャパン。MF本田圭佑(24=CSKAモスクワ)は慣れない1トップで起用されながら、2得点と結果を出した。ビッグマウスとやゆされ“孤高の存在”だった本田が、チームの中心となったのはいつだったのか――。

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 カメルーン戦前日の6月13日、本田は24歳の誕生日を迎えた。フリー・ステート・スタジアムでの公式練習を終えると、本田は笑顔も見せず「僕の誕生日なんて誰も知らないと思いますよ」と話した。

 だが、その日の夜に予想していなかった出来事があった。宿舎で、カメルーン戦に向けた決起集会を兼ねて、誕生日会が催された。ケーキが用意され、主役の本田を中心に笑顔の輪ができた。

 本田は孤高の存在だった。昨年秋の合宿では「もっと他の選手と話をしないといけない。携帯の番号とかほとんど知らないし、聞きたい」とコミュニケーション不足に悩んでいた。ある選手は「本田の電話番号?誰も知らないんじゃないかな」と話していた。自分の考えをはっきりと口にし、自分のやり方を貫く本田を煙たがる選手は確かにいた。06年ドイツ大会の中田英寿のように孤立する危険性があった。

 変化が見え始めたのはスイス・ザースフェー合宿。欧州CLなどで結果を残した本田は一目置かれる存在だった。その本田が自ら積極的に話しかけた。取っつきにくいイメージとは違いノリも良い。他の選手との距離は徐々に縮まった。

 ピッチ上でも周囲に溶け込んだ。5月28日の練習後には、グラウンドに残り長谷部、遠藤、阿部、長友と約30分間話し合った。コーンを使ってポジションを確認した。長谷部は「代表選手として自覚が出てきた」と本田の成長に目を細めていた。中沢は「世界の舞台で結果を残しているから本田の言うことには説得力がある」と話した。

 練習前のウオームアップはチーム内の人間関係がよく分かる。2人1組でパス練習などは自然と仲の良い選手同士でやるからだ。長友は「中村ストーカー」と言われるほど常に中村のそばにいたが、南アフリカでは本田のパートナーを務めることが多くなった。

 カメルーン戦で先制点を決めた本田はベンチへと走った。試合前には中村憲と「点を取ったらベンチに行く」と約束していた。長谷部は「チームのためを思ってベンチに行ってくれて、実は良いヤツなんだなと思った」と振り返る。その瞬間、日本代表は本田中心のチームになっていた。(特別取材班)

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2010年7月4日のニュース