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【リオ五輪成果と課題】金12個呼んだ競技間競争 強化費「選択と集中」で開花

[ 2016年8月23日 08:30 ]

リオデジャネイロ五輪の閉会式で、入場する日本の選手たち
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 海外での五輪としては史上2番目に多い338人の大選手団をリオに送り込んだ日本は、金メダル12個をはじめ41個のメダルを獲得した。金7個のロンドン大会と比べ躍進したが、4年後の東京を考えれば喜んでばかりもいられない。自国開催の目標は「世界3位のメダル数」。その数は金メダル30個と見込まれている。この数字は果たして実現可能か。リオでの成果と課題をいち早く振り返り、4年後を占う。

 今回活躍した日本の選手たちに共通しているのは海外経験が豊富ということだ。長期遠征や合宿によって海外での生活に慣れ、ライバルたちの動向も把握しやすくなった。最たる例は積極的にツアー大会を回ってきた卓球やバドミントンの躍進だろう。日本卓球協会の前原正浩副会長は「選手層が厚くなった。充実した合宿ができるようになった」と強化費の恩恵を躍進の一因に挙げた。金があれば必ず選手が強くなるわけではないが、金がなくては強くなれないのもまた現実だ。

 日本のスポーツ行政は、20年大会の東京開催が決まった13年から大きく変わった。14年度までは日本オリンピック委員会(JOC)が国から直接補助金を受け取っていたが、15年度からは日本スポーツ振興センター(JSC)に一元化。その上で戦略的強化費はJSCが、主に財政基盤の弱い団体を中心に配分される基盤的強化費はJOCを通じて配分することになった。リオ大会が開催された今年度のスポーツ関連予算は前年度比34億円増の324億円。うち選手強化に直接つながる競技力向上の予算は同13億円増の87億円だった。

 支給額を増やしただけではなく、文科省(昨年からはスポーツ庁)は「選択と集中」を掲げ、徹底した成果主義を導入した。強化費の配分に当たっては各競技団体に細かい目標を提出させ、大会実績なども考慮した上で、リオや東京で活躍が期待できる種目に重点的に配分した。また、これらの強化費とは別にJSCがサッカーくじの収益などを原資としたアスリート助成もある。別表は今年7月に決定した助成対象人数(トップ、ユース含む)の多い競技と今大会のメダル獲得実績を並記したものだが、一定の相関関係は認められる。

 その他、医科学面全体の予算は35億円が計上され、リオでは「ハイパフォーマンスサポートセンター」を設置。疲労回復用の炭酸風呂や相手選手たちの試合を映像で分析できる装置なども設置された。「金をかければメダルが獲れる」という現実は、日本に限ったわけではない。ロンドン五輪に向け宝くじの売り上げを利用した公的機関「UKスポーツ」を設置、この4年間も450億円もの強化費を投入した英国は、金メダル数で世界2位まで躍進している。

 JOCが掲げる東京五輪での目標は「メダル獲得ランクで世界3位に入る」こと。目安は金メダル30個とされる。日本選手団の橋本聖子団長は国に対し、強化費のさらなる拡充や海外のトレーニング拠点の設置などを求めていく考えを表明し「やれるだけのことをやる。世界3位という目標は確実に達成しなければいけない」と話す。そのためには増大する強化費に対する国民の理解も必要。スポーツ庁をはじめとした関係者の手腕が問われる4年間とも言える。

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