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【世界のアスリート】ツール・ド・フランス捨てた夫と二人三脚で頂点

[ 2016年8月21日 08:10 ]

トライアスロン女子で優勝した米国のジョーゲンセン(AP)

リオデジャネイロ五輪・女子トライアスロン

(8月20日)
 「あなたの夢を諦めてどうするの?思い直して!」。トライアスロン女子で優勝したグウェン・ジョーゲンセン(30)は4年前、夫のパトリック・ルミュー(28)を懸命に説得していた。

 自転車のロードチームに所属していたプロのレーサー。彼が描いていた未来図にはツール・ド・フランスなどの世界的な大会での優勝があった。しかし出会ったその日からデートをしていた夫は、ロンドン五輪で38位に終わっていた妻のために料理、洗濯からコンビニへの使い走りを含めた全マネジメントを1人でこなすことを決意。「君の夢は僕の夢だ」と競技から離れた。

 高校時代に競泳の選手だったジョーゲンセンはウィスコンシン大では陸上を2年ほどやったがどちらも成績は中の上。卒業後は公認会計士として働き始めた。しかし人生は急変。スカウティングをしていたトライアスロン関係者が声を掛け、やがて夫となる自転車の選手とも出会った。

 最初はパンクの修理さえできなかったがすぐに頭角を現し、苦手だったバイク(自転車)は練習パートナーだったルミューを得たことで上達。1万メートルを31分台でクリアできる走力は今や女子トライアスロン界では断トツで、ここ2年間で出場した16大会では14勝を挙げていた。先頭集団で最後のランに入った時にはV率100%。それは今五輪でも同じだった。

 「自分の夢を諦めたパトリックのために金メダルが欲しかった。彼の“投資”になんとしても応えたかった」。トライアスロン発祥国、米国が手にした五輪の初の金メダル。絶対女王を支え続けた元自転車選手の夢が、形を変えて実現した瞬間だった。

 ◆グウェン・ジョーゲンセン 1986年4月25日、ウィスコンシン州出身の30歳。競技歴は6年。12年ロンドン五輪はパンクに見舞われて38位。14、15年の世界選手権で連覇、シリーズ年間ランキングでも2年連続1位。トライアスロンのラン10キロのベスト記録は31分41秒。1メートル78、58キロ。

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2016年8月21日のニュース