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樋口 王者連破で世界デビュー銀!“新しい時代を担う”20歳

[ 2016年8月21日 05:30 ]

<リオ五輪 レスリング> 銀メダルを手にするも笑顔のない樋口

リオデジャネイロ五輪・レスリング男子フリースタイル57キロ級 決勝

(8月19日)
 隠し玉が初出場の五輪で頂点にあと一歩に迫った。19日のフリースタイル男子57キロ級で樋口黎(20=日体大)が銀メダルを獲得。決勝では15年世界王者のウラジーミル・キンチェガシビリ(25=ジョージア)に3―4の判定で敗れたが、84年ロサンゼルス五輪62キロ級銀メダルの赤石光生(当時19歳)に次ぐレスリング日本男子歴代2位の年少メダルとなった。男子74キロ級の高谷惣亮(27=ALSOK)は3回戦でカザフスタン選手に敗れた。

 マットを下りた樋口は悔しさを圧し殺すように頭からタオルをかぶった。金メダルまであと一歩。無念の思いは表彰式でも表情をこわばらせた。

 「悔しい気持ちはたくさんあるが、自分の攻める形、スタイルは崩さなかったので後悔はない」

 世界王者5人がひしめくトーナメント。世界大会初出場の樋口は隠し玉としての期待通り、必殺の片足タックルで勝ち上がった。1回戦では14年の世界王者をテクニカルフォール。準決勝でも13年世界王者を10―5で下し「僕の片足タックルも世界トップと証明できた」と雄叫びを上げた。

 フランス菓子のマカロンが大好きで偏食家。自ら「驚くほど低い身体能力」と認め、50メートルを走らせれば9秒かかる。それなのに左からの片足タックルは、面白いように王者の足に絡みついた。

 「身体能力が低くてタックルも一番遅いけど、相手を動かして、足を出してきた瞬間に入る。そのタイミングや駆け引きは誰にも負けない」

 4歳から通った吹田市民教室では「タックルとローリング」をモットーとする攻撃スタイルをうまくのみこめなかった。「このままじゃ落ちこぼれちゃうな」。そう考えた当時コーチの増田周司氏(51)は、あえて色を変え、守りから入って返し技などで勝つスタイルを教えた。これがはまった。対戦相手のコーチは「樋口君の足は取れそうなんだけど、取りにいくとやられちゃう」とよくボヤいていたという。相手を動かし、重心を見極める。身体能力を補う洞察力は培ってきた。

 昨年6月の全日本選抜選手権で減量失敗。「知識がなくて、がんがんケーキを食べながら減量していた」。あるまじき失敗だったが、大きな転機となった。マカロンを我慢して節制に励むなど意識改革の結果、同12月の全日本選手権で優勝。今年3月のアジア予選を制してリオ行きを決めた。

 決勝の相手もまた昨年の世界王者だった。片足タックルは何度となく決まったが、それを効果的に得点につなげられなかった。リードを守りきれずに惜敗。「最後は自分の攻めが相手の守りを超えられなかった」。フリー軽量級のメダルの伝統をつないだ20歳は、まだまだ発展の途上にある。

 ◆ウラジーミル・キンチェガシビリ(ジョージア=レスリング男子フリースタイル57キロ級)12年ロンドン五輪55キロ級2位。世界選手権は15年優勝、14年2位。1メートル70。25歳。

 ◆樋口 黎(ひぐち・れい)

 ☆生まれとサイズ 1996年(平8)1月28日、大阪府吹田市生まれの20歳。1メートル63。名前の黎(れい)は「新しい時代を担っていく者」という意味。

 ☆レスリング歴 4歳から吹田市民教室で始め、中1からはリベラルキッズ・クラブ(現堺ジュニアクラブ)。霞ケ浦高を経て日体大に進学。

 ☆得意技 片足タックルに加え、独特のきめ方をするアンクルホールドも。「僕の片足とアンクルは警戒されても取れる自信がある」と豪語。

 ☆五輪への憧れ 08年北京五輪の湯元健一の3位決定戦をテレビ観戦したのがきっかけ。湯元氏には現在、日体大で指導を受ける。

 ☆マカロン好き 母・容子さん(44)が高校の時に差し入れたのがきっかけ。大相撲の優勝力士に贈られる日仏友好杯の副賞の巨大マカロンをゲットするのが野望。

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