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競歩の偉業を支えた工夫 スピード重視、外国人審判招へい

[ 2016年8月21日 08:26 ]

<男子50キロ競歩>「メダルにキスを」のリクエストに照れ笑いを浮かべる荒井

リオデジャネイロ五輪陸上・男子50キロ競歩

(8月19日)
 ≪持久力よりストライド≫日本陸連強化委員で強化に携わる清水茂幸・山形大教授は、持久力を養う「量」を中心とした従来の練習から「スピード」を出すフォームづくりにも重点を置いたことが日本競歩界初のメダルにつながったと分析した。

 「ストライドが1センチ伸びれば速度は上がる。どう体を使えば良いか、ディスカッションを続けました。この2~3年は朝の練習でも“歩く”“走る”をやめ、動きづくり、股関節周りや体幹強化を徹底しました」。荒井の進化は20キロ競歩の1時間19分台のタイムに見てとれる。50キロ専門の日本人選手が1時間20分台を切るのは異例で「乗り遅れていた世界のスピード化に追いついてきた」ことの表れだ。

 カナダ選手との接触で抗議も受けたが「接触での失格など見たことありません。カナダの抗議も駄目もとだったと思います。コースが狭ければ接触は日常的」と一笑に付した。

 また、4年後の東京五輪に向け、清水教授は「荒井選手が歴史を刻んでくれた。20キロの選手にもいい影響があると思います。やってきたことに間違いはない。強化の精度を上げていければ」とさらなる飛躍を後押しする構えだった。

 ≪陸上界随一の科学的取り組み≫競歩陣のレベルアップは外国人審判の招へいが大きく寄与した。日本代表の今村文男コーチは「00年シドニー五輪の頃はどんなにいい記録が出ても、日本で出したんでしょと言われていた」。そこで近年は国内の大会に国際大会レベルの審判を招き、ジャッジの傾向を探った。

 陸上界随一の科学的な取り組みも見逃せない。代表合宿中、選手は朝に検温、脈拍数、尿検査などを必ず行う。疲労度などを把握し、体調に合わせ練習メニューを組み立てる。さらに荒井は2年前に貯金をはたいて100万円の低酸素テントを購入。就寝時に使用し心肺機能を高めてきた。その後、谷井も触発されてテントを購入。情報の共有化も初メダルにつながった。

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