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登坂絵莉 初舞台で金!新世代ヒロイン誕生 東京五輪で連覇へ

[ 2016年8月19日 05:30 ]

<リオ五輪 レスリング> 金メダルを手に笑顔の登坂

リオデジャネイロ五輪レスリング・フリースタイル女子48kg級

(8月17日 カリオカアリーナ)
 何千回、いや、何万回も、この動きを繰り返してきた。頭で考える必要なんてない。絶体絶命の状況で、登坂の体が勝手に反応した。残り30秒。「あ、やばっ、負けちゃう」と思ったのを最後に記憶は飛んだ。残り5秒。スタドニクの右足に絡みつき、そしてなぎ倒す。残り2秒。スコアは1―2から3―2に変わる。ミラクル逆転劇に歓喜の雄叫びを上げた22歳は、表彰式で君が代を聞くと大粒の涙を流した。

 「ホントに最高。(金メダルは)凄く重い。日の丸が揚がっていって、ホントに優勝したんだなって気持ちと、いろんな人の顔を思い出して。夢みたいだなぁって泣けてきた」

 8歳でレスリングを始めてから、誰よりも汗を流してきた自負がある。居残り練習は当たり前。中学生になると練習帰りに小学校の校庭に忍び込み、懸垂などで筋力アップを図った。通行人から不審者扱いされても気にしない。「練習量は世界一」と至学館高時代から指導する栄チームリーダーは言う。高校時代、同チームリーダーに「えり」という名前を覚えてもらえず、なぜか「ゆうちゃん」と呼ばれていた。決してエリートではなかったが、初の夢舞台で黄金の輝きを手に入れた。

 「金メダルというものに対する執念が最後、自分が上回ったんじゃないかな。最後の最後は、そこが勝ったと思う」

 04年アテネ五輪前、地元の富山で女子日本代表が強化合宿を実施。吉田沙保里から「将来は五輪で金メダルを獲ろうね」と励まされたことは、今も忘れない。リオ入り後、登坂は柔道女子70キロ級の田知本遥に金メダルを触らせてもらった。触ろうとしなかった吉田は言った。「私は(登坂)絵莉の(金メダル)を触るから、いいんだ」。憧れの大先輩との約束を果たした22歳は、「早く沙保里さんに見せてあげたい」と笑った。

 肩や膝など数々の故障を抱えながら、たどり着いた世界の頂。涙が乾いた瞳で見つめるのは、もちろん20年東京五輪だ。「初めて五輪に出て、出たから分かる凄さを感じた。これが東京だったら、もっと凄いと思う。絶対に私が出て、連覇をしたい」。これから4年、また誰よりも汗を流し、登坂は夢舞台に帰ってくる。

 ◆登坂 絵莉(とうさか・えり)

 ☆生まれとサイズ 1993年(平5)8月30日、富山県高岡市生まれの22歳。1メートル52、普段の体重は53キロ前後。

 ☆レスリング歴 高校時代に国体優勝経験のある父・修さんの影響で9歳で高岡ジュニア入り。富山・南星中―至学館高―至学館大―東新住建。全日本選手権、全日本選抜ともに12年からV4。

 ☆世界選手権 初出場の12年は銀。翌年から3連覇。女子レスリングが採用された04年アテネ以降、世界選手権V3以上は吉田沙保里、伊調馨、小原日登美に続いて4人目。

 ☆メダル仲間 柔道女子48キロ級銅メダリストの近藤亜美とは、近藤が高校時代に至学館高に練習見学に来た縁で仲良し。

 ☆減量 アジア選手権では約1カ月の長期で落としたが3年ぶりに敗れ、今回は約10日で落とす短期型に戻した。

 ☆勉強 高校の時にオール5を取ったことも。至学館大の大学院健康科学研究科に在籍しており、運動生理学やスポーツバイオメカニクスを学ぶ。

 ▼今五輪の北陸出身者のメダリスト 柔道女子70キロ級の田知本遥(富山出身)が金を獲得。同じく女子57キロ級の松本薫(石川出身)、競泳男子800メートルリレーで小堀勇気(石川出身)が銅を獲得

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