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白井新技はただの“プラス半ひねり”にあらず

[ 2016年8月17日 09:54 ]

1回目の演技で伸身ユルチェンコ3回半ひねりを成功させる白井

リオデジャネイロ五輪体操・種目別跳馬決勝

(8月15日)
 【立花泰則の目】白井が成功させた新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」は、本当に難しい技で、他の選手には簡単に攻略できない高い次元の難度の技だ。「シライ/キムヒフン」から半ひねり増えた技だが、ただ半ひねりを足しただけという単純なものではない。

 この技は、助走の側転1/4ひねり(ロンダート)から後ろ向きに台に着手し、3回半ひねりに持っていく。この着手の角度とタイミングを合わせるため、白井は五輪前の国内合宿でも試行錯誤を繰り返していた。新たな技術と感覚のすり合わせ、完成度の向上に時間がかかった。

 そこで積み重ねて得た自信が、種目別決勝で新技に挑むことを後押ししたはずだ。小さな頃からトランポリンで培ったひねりの技術を、床運動、跳馬に転用した新技は、質の高い基本に支えられている。合理的で美しく、独創性を兼ね備えた技と言えるだろう。

 この白井の進化は、金メダル獲得への布石とも言える。今回は完成度と安定性を重視したドリッグス(Dスコア5・6)を2本目に跳躍し、実施点(Eスコア)を9・466点にまとめたことが、銅メダル獲得のもう一つの要因だった。Dスコア6・0のロペスも跳躍できたと思うが、1本目の新技に集中したのが功を奏したのではないか。

 つまり、白井にはまだ「のびしろ」がある。上位2人に勝つためには、やはりDスコア6点台の完成度の高い技がもう1本欲しい。種目別床運動でメダルを逃し、跳馬では銅メダル。悔しさと結果の両方を日本に持ち帰ることは、強くなる原動力にもなる。東京五輪に向け、白井のさらなる進化が楽しみだ。(12年ロンドン五輪男子日本代表監督)

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2016年8月17日のニュース