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小原 万感の金「あきらめずに頑張れば夢はかなう」

[ 2012年8月9日 03:29 ]

女子48キロ級で獲得した金メダルを手に笑顔を見せる小原日登美

ロンドン五輪レスリング女子48キロ級決勝

 涙をこらえることができなかった。金メダルを決めた瞬間、小原日登美(自衛隊)は両手で顔をおおい、座り込むとマットを2度叩いた。ようやく念願の五輪女王の称号を手に入れた。

 「本当に信じられないです。私1人の力ではこの金メダルは取れなかったと思うので、みんなで取ったメダルだと思います。うれしいです。みんなの応援が力になりました。マットでも一人じゃないと最後まで戦えました。笑顔をみんなに見せることができたのが、本当にうれしいです」そういいながらも、顔は涙でくしゃくしゃなまま。

 会場で応援していた夫の康司さん(30)、父坂本清美さん(57)、母万理子さん(56)、かつてレスリング選手だった妹清水真喜子さん(26)も、涙を抑えることができなかった。

 平坦な道のりではなかった。もともと51キロの小原は、2008年まで同階級で6度の世界選手権女王になっていた。だが、五輪には縁がなかった。04年アテネで五輪正式種目入りした女子は、4階級だけ。48キロ級には妹・真喜子さんがいたため、55キロ級に階級を上げた。だが、ここには、“最強”吉田沙保里(29)の大きな壁があった。挑んでは跳ね返され、08年に2度目の引退を決意。だが、その後コーチとしてサポートしていた妹が引退。「私はこれ以上強くなれない。五輪はお姉ちゃんが目指した方がいい」と頼まれ、09年12月、48キロ級で3度目の現役復帰を果たした。

 当初はスピードに戸惑いもあった。3キロ落とす減量の過酷さにも苦しんだ。それでも、完璧主義者で不安に陥りやすい小原を、高校のレスリング部で1年後輩だった康司さんが支えた。2010年、2011年に48キロ級で世界選手権に優勝し、ようやくつかんだ五輪切符だった。

 小原は「初めての五輪であり、最後の試合だと思う」と五輪後の引退を示唆していた。その、“最初で最後”の大舞台で夢だった金メダルを獲得。表彰台で、中央に立つ小原は、君が代を聞いた後、ようやく笑顔がこぼれた。「どんな時でも、あきらめずに頑張れば夢はかなうと思います」この言葉が、小原のレスリング人生を物語っていた。

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