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聡美、女子初の個人複数メダル「自分におめでとう」

[ 2012年8月4日 06:00 ]

銀メダルを手に笑顔を見せる鈴木

ロンドン五輪 競泳女子200メートル平泳ぎ

 日本女子競泳界の新エースだ!!2日の女子200メートル平泳ぎで、鈴木聡美(21=山梨学院大)が日本記録タイの2分20秒72で、銀メダルを獲得した。100メートルの銅に続いて2つ目のメダルで、日本女子の同一大会での個人複数メダルは史上初の快挙となった。男子200メートル背泳ぎでは100メートル銅の入江陵介(22=イトマン東進)が1分53秒78で銀メダルを獲得。日本競泳陣のメダル獲得数は銀2、銅7の計9個で、04年アテネ五輪の8個を上回る戦後最多となった。

 全力を尽くした後には、満足感、そしてはちきれんばかりの笑みがあった。高速水着時代の09年に金藤理絵が出した日本記録に並ぶ2分20秒72。タイムを確認した鈴木は驚きの表情を見せたが、その後は笑顔が止まらなかった。「自分におめでとうと言いたい。凄く楽しいレースができた」。準決勝で出した自己ベストをさらに1秒68更新しての銀メダルに「(銅だった)100メートルよりもいい色を獲ることができて本当に良かった」と大きな瞳を輝かせた。 

 先行する第一人者のソニに食らいついた。100メートルまで体半分の差でつき、後半はペースアップして逃げ込みを図るソニを懸命に追いかけた。150メートルで3位から2位に浮上すると、そのままソニに次いでタッチした。世界記録を出したソニに1秒13差。大会前、自己ベストで3秒近くあった差を大きく縮め「尊敬するソニ選手に体1個分まで追いつくことができた」と満足感に浸った。
 
 高校時代は全国的にはほぼ無名だった。中2で全国制覇の経験があったが、九産大付九州高入学後はなかなか自己ベストが出なかった。飛躍のきっかけは、当時授業で教わった言葉が心に響いた。「捲土(けんど)重来」(一度失敗したものが再び盛り返すこと)。自宅の居間にその言葉を記した紙を貼って、気持ちを奮い立たせ、3年時の総体で3年ぶりに自己ベストを更新した。

 山梨学院大入学後、急成長し、昨年は世界選手権に出場した。平泳ぎのエースとして期待されたが、200メートルではまさかの予選落ちだった。帰国後、山梨の寮の玄関にも書道家がしたためた「捲土重来」の文字を掲げた。大学の練習では隣で泳ぐ男子選手をソニに見立てて「負けるかっ」と歯を食いしばった。泳ぎの切れを出すために減量にも挑戦。ごはんや油物などを控え、1日約1食分のカロリーを減らし、68キロから62キロまで落とした。「きつい練習をやってきて、タイムが上がったのでよかった」。笑顔の裏には努力があった。

 競泳界に彗星(すいせい)のごとく現れた新星は一大会の個人2種目でのメダル獲得が日本女子史上初だと聞くと「えっ、そんなことやっちゃったんですね、私…」とはにかんだ。女優の故夏目雅子さんに似ていると評判の美人スイマー。4年後のリオでは「競泳界のエース」となっているにちがいない。

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2012年8月4日のニュース