男子マラソンにまた伏兵…“飛脚ランナー”山本、五輪当確
びわ湖毎日マラソン
(3月4日 皇子山陸上競技場発着)
超新星が現れた。ロンドン五輪男子代表の最終選考会を兼ねて行われ、一般参加の山本亮(27=佐川急便)が、自己ベストを3分26秒更新する2時間8分44秒をマークして日本人トップの4位に入った。トラック勝負で中本健太郎(29=安川電機)を逆転し、12日に発表される五輪代表の座を確実にした。マラソン4度目、近く結婚予定の“飛脚ランナー”が、夢舞台でも激走する。サムエル・ドゥング(23=ケニア)が2時間7分4秒で優勝した。
冷たい雨を切り裂き、無名ランナーが劇的に決めた。トラックに入った時点で日本人トップ・中本との差は10メートル。残り400メートルで逆転した山本が、両手を広げて歓喜のゴールに飛び込んだ。所属は「飛脚宅配便」で知られる佐川急便。会社の理解もあり競技に集中できる環境だが“トラック勝負”なら負けられない。「必死に追いかけたんで、まだアドレナリンが出ている。オリンピック、オリンピックと念じて走っていた」。一般参加で五輪代表選考とは無縁と思われていた男がロンドン切符を確実にし、胸を張った。
ペースメーカーが外れた25キロで堀端が抜け出したが、山本は中本とともに追走。最大25秒差まで開いたものの、冷静に前を見据えていた。「後半は誰よりも強いと言い聞かせていた」。今大会への3カ月の調整では、マラソン選手の標準の月間1000キロを大幅に超える毎月1200キロの走り込みを敢行した。「日本選手の中でも、僕はかなり距離を踏んでる選手だと思う」。佐川急便陸上部の拠点は滋賀。走り慣れた琵琶湖湖畔のコースで地元の声援も受けたことが、自己記録を3分26秒も更新する結果につながった。
昨年12月の福岡国際で公務員ランナー・川内が日本人最上位の3位。2月の東京で藤原が快走して五輪切符を確定させた一方で、川内は惨敗。混とんムードの五輪代表争いに、無名だったランナーが当確ランプをともした。同時に3番手の代表選びももつれそうな展開となった。「世界大会で入賞しようと思うと、きょうみたいに動けないレースではダメ。もっとスピード持久力を高めたい」。春先はトラックを転戦して本番へ。さらに進化したニューヒーローが、今度は世界を驚かせる。
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