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身体検査で思い出す“若気の至り”

[ 2008年2月8日 06:00 ]

 わたしがまだ現役選手だった10年ほど前に「競輪選手の平均寿命(選手寿命ではなくホントの命)は62歳で、プロスポーツ選手の中で第2位の短さである」と怪情報が流れた。どこかの専門機関の研究データだとかで「40歳を超えてからの心臓への重い負担と極度のプレッシャーが原因」だそうだ。ちなみに第1位はお相撲さんで原因は太り過ぎ。
 「へぇそうなんやぁ…」とウソかホンマか分からぬ噂話を私は気にもしなかった。もしこれが真実であれば選手は「男の平均寿命より12年も短いやん」と、うろたえたり、襟を正そうとしたりするのかなぁ?
 40歳でガン宣告されたわたしにしたら「62歳まであと14年も生きれるやん。大往生でラッキー」と素直に喜んでしまう。でもあの当時、私が気にしなかった理由は「しょせん平均値や。おれだけは長生きするに決まっとる」というのが本音。そう思うとえらい変わりようだ。
 どこの企業でもあるように競輪選手にも年一度の身体検査がある。大事だと分かっていながらも「ほんま面倒くさいわぁ」と皆ブツブツ文句をタレる。基本的な検査は流れ作業で1時間ぐらいで簡単に終わる。だが私のガン細胞はこんな検査をいとも簡単にすり抜けた。40歳を過ぎれば、早期発見を心掛けるためにも人間ドックに入った方がいい。年々長寿になっているのは健康体になっているのではなく医療の発展なだけである。恐れることはない。早期発見ならガンだって簡単に完治する時代になった。
 医療が凄いスピードで進歩していると思うのは、自分の小学生の頃を思い出すだけで簡単に実感できる。
 体育館に集まっての予防接種の注射って確かまだ使い回しだった。マッチ箱にウンコを入れた検便もあった。「後ろから集めてー」先生の指示に女子は恥ずかしそうに下を向いた。「あのマッチ箱を手のひらに乗せたい…」と自分の好きな娘を見つめて口走ったアホなやつもおった。だけどもっとアホがいてました…。
 後日ホームルームで先生は僕にこう言った。「さいとう君、なんですかあの検便は!?」「…」「なんとか言いなさい!」「…」「検査した人がひっくり返ったそうですよ!」。もう限界であった。バレたんだったらなりきるしかないと思った僕は大きな声でこう叫んだ……「ワン!ワン!」。

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