藤井正弘の血統トピック

障害新王者マイケルに宿る生命力

[ 2020年1月9日 05:30 ]

 19年度のJRA賞が7日に発表された。父ハーツクライとのグランプリ2代制覇を圧勝で飾った年度代表馬&4歳以上牝馬のリスグラシュー以下、各部門賞もほぼサンデーサイレンス系産駒の独占市場となったわけだが、そんな中で異彩を放つのが絶対王者オジュウチョウサンの“V4”を阻止した障害部門の新王者シングンマイケルの血統だ。

 シングンマイケルの父はオペラハウス後継のシングンオペラ。船橋所属時に出走したひいらぎ賞で16頭立て15番人気で2着に追い込み、JRA転入後も当時の500万条件から挑んだアルゼンチン共和国杯で3着に入るなど、地方・中央通算16戦1勝という競走成績以上に印象深い馬だが、さすがに種牡馬としての需要は限定的で、03年から21歳で没した19年までの17年間、ほとんどオーナーである伊坂重憲氏の自家生産用として供用された。年平均3頭に満たない計41頭の血統登録産駒の中から障害王が現れたのは驚きであると同時に、父系祖父オペラハウスからの隔世遺伝という解釈も成り立つ。オペラハウスは11、12年のJRA最優秀障害馬マジェスティバイオなど5頭の障害重賞勝ち馬を出し、リーディング通算4回という名障害サイヤーでもあったのである。

 シングンマイケルは母の父が91年の年度代表馬トウカイテイオー。残念ながら“JRA賞血統”の伝承はかなわない去勢馬だが、血脈に潜む生命力を武器にオジュウチョウサン級の長期政権を築く可能性大だろう。(サラブレッド血統センター)

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