「日本に戻る」約束果たせぬまま…1年前に星になったミナリク騎手

[ 2024年9月6日 05:05 ]

1年前に星になったフィリップ・ミナリクさん
Photo By スポニチ

 【競馬人生劇場・平松さとし】フィリップ・ミナリク騎手は2017年のジャパンC(G1)でギニョールに騎乗。その際、一緒に来日したのがイキートスに騎乗したダニエレ・ポルク騎手だった。

 異国からドイツに移籍するなど、環境が似ていた2人は大親友。ジャパンCからの帰りの飛行機で「必ず日本に戻ってきてまた乗ろう」と誓い合ったそうだ。

 しかし、その約束は果たされなかった。この時、ポルク騎手は既に病魔に侵されており、帰国後わずか1カ月半ほどで他界したのだ。

 「この時から日本で乗ることが義務に変わった」とミナリク騎手。短期免許で来日すると、生前のポルク騎手が使用していた鞍を持参。

 「その鞍を装着して騎乗しました」

 すっかり親日家となったミナリク騎手をアクシデントが襲ったのは20年の7月だった。ドイツ、マンハイム競馬場で騎乗した彼は落馬。約1カ月にわたり意識が戻らない大ケガを負った。しかし、奇跡的に昏睡(こんすい)状態から覚めると、その後、懸命のリハビリで時間をかけながらゆっくりと回復。残念ながら馬に乗れる体ではなくなったが、立つことすらできない状態から歩けるまでになり、英国や仏国、ドバイなど、世界各国で彼と再会した。

 「いつか日本にも戻って応援してくれた日本のファンの皆さんにあいさつをしたいです」

 顔を合わせるたびにそう言っていた。

 しかし、そんな彼もちょうど1年前の23年9月4日、唐突に星になってしまった。ポルク騎手に続き、彼もまた「日本へ戻る」という約束を果たせないまま逝ってしまったのだ。

 彼とやりとりをしていた通信ツールのWhatsAppには、今でもそのやりとりが残っている。日本馬が活躍するたび「Omedeto」のメッセージが届けられたし、こちらからの質問に対しては即座に返信が来ている。しかし、ちょうど1年前の9月5日に送った“I can not believe(信じられない)”という問いには、いまだに返信がない。 (フリーライター)

続きを表示

「2024 秋華賞」特集記事

「府中牝馬S」特集記事

ギャンブルの2024年9月6日のニュース