【書く書くしかじか】「ウマ娘」の凄みを肌で感じた笠松遠征

[ 2023年5月3日 10:10 ]

笠松競馬場でトークショーを行った、「ウマ娘」オグリキャップ役の高柳知葉(左)とイナリワン役の井上遥乃
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 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の田井秀一(30)が担当。先月末にクロスメディアコンテンツ「ウマ娘プリティーダービー」とのコラボイベントを行った笠松競馬場に潜入した。

 4月28日の朝。突如、SNSで「笠松競馬場」がトレンドワードとなった。拡散された写真には競馬場の入場門前から形成された長蛇の列。この日、自宅の千葉から始発電車で笠松に向かった記者も、開門前の午前9時ごろ、名鉄の車両に揺られながらこの列を目撃した。お目当ては昨年に引き続き開催された「ウマ娘プリティーダービー×笠松けいばコラボイベント」だ。

 来場者にオリジナルクリアうちわが配布された他、笠松が生んだ怪物オグリキャップが主人公の漫画作品にちなんだ、芦毛馬・白毛馬限定の連携事業記念レース「ウマ娘シンデレラグレイ賞」が施行された。レース後には「ウマ娘」でオグリキャップ役の声優を務める高柳知葉とイナリワン役の井上遥乃によるトークショーも行われ大盛況。入場人員は3000人超。岐阜県地方競馬組合・企画広報課の大野鉱三課長は「全国各地から足を運んでいただき、大変ありがたい。競馬場にとって有意義な1日となりました。若い世代の方もいらっしゃって大きな成果だと思います。開場から最終レースまで長い時間、競馬場にいていただけた。可能なら来年以降も取り組んでいきたい」とイベントを総括した。

 16年にプロジェクトが始動した「ウマ娘」。18年に第1期のテレビアニメが放映され、21年にスマートフォン向けゲームアプリがリリースされると一大ブームを巻き起こした。28日のイベントへ取材に来ていたゲーム系メディアの男性記者も「ウマ娘から競馬に入って、今ではどっぷりハマっています」。昨夏訪問したビッグレッドファームではけい養中のゴールドシップに子供たちからもファンレターが届き、関係者が驚いていた。競馬界の新規ファン獲得に大きく寄与しているのは明白。今年、第3期アニメが放送される予定で、もはや一時的なブームと断ずるのは無理がある。

 春の風物詩となった“引退馬協会の広報部長”ナイスネイチャのバースデイドネーションには今年も、5月2日時点で目標額をはるかに上回る5400万円以上の寄付金が集まった。「ウマ娘」ブーム前の17年の総額が19万8500円だったことを鑑みれば、いかにその効果が大きいかが分かる。また、“とまこまい観光大使”ホッコータルマエがゲームアプリに実装(プレーヤーが育成できるようになること)されると、名産品のよいとまけの売上が急上昇するなど、苫小牧市の活性に一役を買った。

 「ウマ娘」と引退馬支援や地域活性活動の親和性は高く、“コラボ”の範囲はさらなる拡充傾向にある。プロジェクト始動からはや7年。重賞級の歓声が飛んだ競馬場の盛り上がりを目の当たりにし、改めて「ウマ娘」の凄みを肌で感じた笠松遠征だった。

 ◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の30歳。阪大法学部卒。道営で調教厩務員を務めた経験を持つ。19年春から競馬担当。引退馬協会会員。好きな「ウマ娘」はアドマイヤベガ。

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