【天皇賞・春】ディープボンド100点 衝撃ボディー 昨年有馬記念とは雲泥の差

[ 2022年4月26日 05:00 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

ディープボンド
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 ブラックタキシードの下に忍ばせるのはボンドの肉体美だ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第165回天皇賞・春(5月1日、阪神)ではタイトルホルダーとともにディープボンドを満点採点した。達眼が捉えたのは昨年の天皇賞・春、有馬記念(いずれも2着)を上回る青鹿毛の輝きと張り。007シリーズのジェームズ・ボンドも顔負けのスーパーボディーだ。 

 コロナ下で結婚式の延期が相次ぐ中、フォトウエディングで思い出を残すカップルが増えているそうです。新郎衣装の1番人気は映画「007シリーズ」の主人公ジェームズ・ボンドの優雅な着こなしでウエディングの定番となったブラックタキシード。初代ボンドのショーン・コネリーが愛用のワルサーPPK(小型拳銃)を忍ばせてパーティー会場に現れる時のエレガントなスタイルです。

 天皇賞・春でも人気を集めるディープボンド。その毛ヅヤはフォトウエディングでまとうブラックタキシードのように黒い光沢を放っています。ストロボの代わりに朝日を浴びて輝きを増す青鹿毛の被毛。冬毛を伸ばしてくすんで見えた昨年の有馬記念(2着)時とは雲泥の差です。

 前後肢(前腕とスネの部分)の筋肉には血管がうっすらと浮き出ています。昨年の馬体写真には見られなかった。薄い皮膚を持つ馬が鍛え込まれると、こういう血管が写るのです。全身が張りと丸みに満ちた筋骨隆々たる体つき。腹袋もたくましくなった。昨春の天皇賞(2着)時より数段いい。3歳時から背中に余裕があるステイヤー体形でしたが、長距離ロードでしのぎを削る中で男を磨き上げたようです。マッチョでスタイリッシュに洗練された6代目ボンド役ダニエル・クレイグのように。

 007シリーズの中でも人気の「カジノ・ロワイヤル」。クレイグにボンドガールのエヴァ・グリーンが「あなた、またアーマー(よろい)を着けたのね」とささやくシーンがありますが、馬のボンドもよろいのようなタフでたくましいボディーを手に入れたのです。

 背中同様、そのたたずまいにも余裕があります。穏やかな顔つき。涼しい目でハミをゆったりと受けています。長距離戦で何よりも求められる落ち着きがうかがえる立ち姿。窮地に立たされても軽口を叩いて余裕を失わなかった3代目ボンド役ロジャー・ムーアのように。

 ラストシーンで観客は衝撃を受ける…。007シリーズのキャッチフレーズみたいなラストの剛脚で長距離劇場にも衝撃を走らせるか。5日後の劇場公開が待ち遠しいブラックタキシードのステイヤーです。 (NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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