【凱旋門賞】ノースヒルズ・前田代表 ディープボンドで伸び伸び挑戦、父キズナ超えろ

[ 2021年9月28日 05:30 ]

ノースヒルズの前田幸治代表

 チャレンジング・スピリットをモットーに掲げ、世界に通用する馬づくりを志すノースヒルズが「第100回凱旋門賞」にディープボンド(牡4=大久保)で臨む。同馬は13年にフランスに渡り、この舞台で戦った父キズナ(ニエル賞1着から凱旋門賞4着)の血を引く。欧州最高峰の頂点へ、8年前と同じくチーム一丸でアタック。前田幸治代表の言葉には父の背を追い、父超えを目指す息子への期待が込められている。

 欧州の競馬には通称ラビットと呼ばれるペースメーカー役が存在するが、フォワ賞を堂々と逃げ切ったディープボンドは無論、ラビットなどではない。6頭立ての5番人気に戦前はラビット!?と勘違いする人がいても不思議ではないが、鞍上のクリスチャン・デムーロは「プランの一つだった」と戦略に胸を張る。

 さすが日本の競馬にも精通しているクリスチャンだ。日本馬をエスコートした戦略と手腕を称えるほかない。表彰式では、愛娘を肩車するほほ笑ましい光景がグリーンチャンネルを通じて日本のファンに届けられた。

 デムーロ家の長男(ミルコ)はJRAのライセンスを取得し、日本で活躍するのは周知の通り。弟のクリスチャンは…といえばフランスに拠点を置いてからワールドクラスのジョッキーに成長。その象徴ともいえるG1勝利がソットサスで美酒に浸った昨年の凱旋門賞だろう。

 兄ミルコはディープボンドのフォワ賞をライブ視聴して「人気はなかったけど、パリロンシャン競馬場の馬場にフィットする予感はしていた。クリスチャン、やるね!」と弟を祝福した。

 本来ならフォワ賞の勝ち馬とあれば本番の凱旋門賞でも一躍、注目度が高まりそうなものだが、豪華メンバーが集結する今年に限ってはそうはならない。あくまで伏兵の扱いだ。

 ノースヒルズの前田幸治代表も「(13年に)ニエル賞を勝って凱旋門賞に挑んだキズナの時は力が入りましたが、今回は比べるまでもない。ただ、フォワ賞を勝ったことで弟(晋二氏)夫婦がフランスで観戦することになりましたけどね」と肩の力を抜いている。クリスチャンとの関連性もこれまでないに等しいが、同代表は番外編としてこんなリップサービスも…。所有するクルーザーの乗船にデムーロ兄弟を招いた話を聞かせてくれた。

 「3、4年前かな。芦屋のヨットハーバーから淡路島に渡って、寿司を食べたんだけど、クリスチャンがとてもおいしいと言って喜んでいた」

 ジャパニーズ寿司の御礼が絶妙な手綱さばきとなったフォワ賞のV!?ディープボンドは期待感を薄め、楽しみながら見守るくらいがちょうどいい。伸び伸び走ってこそ意外性を発揮するタイプなのだ。

 ◇前田 幸治(まえだ・こうじ)奈良県生まれ。34歳で馬主になる。オーナーブリーダー「ノースヒルズ」代表。84年、北海道新冠町に牧場を開場。同グループはJRA、地方、海外を合わせてG1・35勝で日本ダービーは13年キズナ、14年ワンアンドオンリーで連覇。昨年コントレイルが無敗3冠制覇を成し遂げた。官公庁および民間大型プラントの総合エンジニアリング業「アイテック株式会社」(グループ総従業員3500人)の代表取締役会長。

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