ルメールがほれ込む我慢と辛抱貫く手塚師

[ 2020年5月1日 05:30 ]

ルメールと手塚師(左)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】フィエールマン(牡5歳、美浦・手塚貴久厩舎)で今週末の春の天皇賞(G1)の連覇を狙うのがC・ルメール騎手だ。同騎手はここまでJRAのG1を27勝しているが同じ馬で同じG1を連覇したことはまだない。果たして自身初の記録を残せるだろうか。

 そのルメール騎手が以前「手塚調教師のことが好きだ」と語っていた。理由を聞くと「乗るたびに馬が良くなっているから」と答えた。なぜそうなるのだと思うか、さらに突っ込んで聞くと、今度は次のように言った。

 「無理に使わない。焦って使わないからだと思う」

 これを裏付けるような話を手塚調教師自身の口からも聞いたことがある。

 「父からは“とにかく我慢。辛抱が大切”といく度も聞かされました」

 手塚調教師の父の手塚佳彦氏は元・足利競馬の調教師。日本におけるサラブレッドの平地連勝記録(29連勝)をマークしたドージマファイターを育てた地方の伯楽だ。同馬はJRAでは5戦未勝利。当時、同馬の所属していた厩舎で調教助手をしていたのが現在の手塚調教師だった。素質を見抜いた手塚調教師が口をきき、父の厩舎に転厩。佳彦調教師(当時)は「我慢しながら育て直す」ことで、日本記録を樹立させるまでに成長させた。この時、手塚調教師は父から口酸っぱく言われた「馬相手なのだから我慢が大切」という言葉の意味が身に染みて分かったと言う。

 思えばフィエールマンも我慢、辛抱しながら使ってきたことが良く分かる。菊花賞を制した際は約3カ月半ぶりの競馬、キャリアわずか4戦目での戴冠だった。昨年、春の天皇賞を勝った時も3カ月以上空いての実戦。キャリア6戦目での制覇だった。我慢して無理に使わなかったからこその偉業達成だったわけだ。

 今週のフィエールマンは昨年の有馬記念以来のレースになるが、手塚調教師のそんな使い方を見ていると何も不安はないと思える。コロナ禍に揺れる現在だからこそ「我慢、辛抱が大切」と掲げるホースマンに勝利してもらいたい気持ちになるが、果たしてどんな結果が待っているのだろう。
(フリーライター)

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2020年5月1日のニュース