【チャンピオンズC】クリソベリル100点!まるで宮本武蔵“超馬的”筋骨隆々530キロ超

[ 2019年11月26日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<チャンピオンズC>まるで宮本武蔵!!鍛え抜かれた肉体を備えているクリソベリル(撮影 亀井 直樹)
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 砂の武蔵が混戦G1を一刀両断だ!鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。秋のダート王決定戦「第20回チャンピオンズC」(12月1日、中京)ではデビュー5戦無敗のクリソベリルに唯一満点を付けた。達眼が捉えたのは生涯六十余度の勝負で無敗を誇った伝説の剣術家、宮本武蔵を想起させる筋骨と眼力の凄み、そして、二刀流の血統を体現する変幻ぶり。有力候補のボディーを剣豪になぞらえながら解説する。 チャンピオンズC

 「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」。伝説の剣豪、宮本武蔵が「五輪書」で説いた教えです。その道を究めるには稽古を重ねて鍛え抜き、さらに長い年月をかけて練り上げていくべきだとの意味。クリソベリルという3歳馬には驚かされました。新馬勝ちから1000日どころか、わずか500日足らずで肩先から尻に至るまで鍛え抜かれた肉体を備えている。その鋼のような精錬された馬体は無敗の進撃を続けるダート馬にふさわしい。1000日以上のキャリアを積んだ歴戦の古馬もはるかにしのぐ強じんさです。

 首差しの太さ、肩の盛り上がり、腹袋の厚み、トモの重量感。いずれも並外れています。下半身に目を移せば、トモのパワーを推進力に変える飛節は立派、管囲が太く、四肢の腱も太く浮き出ている。個々の部位が突出している馬なら星の数ほどいますが、クリソベリルは全てが特大なのに突出せずに調和が取れている。鍛錬の結晶です。

 その肉体の凄みは、まるで生涯無敗を誇った宮本武蔵。後に著された武蔵の伝記「兵法大祖武州玄信公伝来」によれば、身長は6尺(約1メートル80)、骨太な体躯(く)で力は超人的だったといいます。船の櫂(かい)を削った刀で巌流島の死闘に臨んだほどの怪力でした。馬の武蔵は体重530キロ超、筋骨隆々たる体躯で力は“超馬的”です。

 悠然とした面構えも大物感を漂わせます。耳にさほど力を入れず、ハミをゆったりと受けています。目つきは穏やかでも、闘志を宿すような目力がある。野武士のように眼力の強さが際立つ宮本武蔵の肖像画を見ているようです。

 エリザベス女王杯、宝塚記念を制したマリアライトの半弟。細い首と薄いトモ、440キロ足らずの小さな体で芝のG1を席巻した半姉とは似ても似つかぬ体形に、血統の妙を感じずにはいられません。父がディープインパクトからゴールドアリュールに代わると100キロも違う馬体になるのか。ちなみに、全兄はジャパンダートダービー優勝のクリソライト、半兄は神戸新聞杯勝ちのリアファル(父ゼンノロブロイ)です。父に応じて芝馬にもダート馬にも変わる二刀流の血統。右手に大太刀、左手に小太刀の二刀を用いた宮本武蔵の二天一流のように変幻自在です。

 チャンピオンズCの先には、来年復帰するルヴァンスレーヴとの対決が待っている。ごついクリソベリルとは対照的なしなやかな肉体を持つ昨年のチャンピオンズC覇者。斬り下ろした長刀をしなやかな身のこなしで斬り上げる佐々木小次郎の「燕返し」をイメージさせる強豪との巌流島決戦を前に負けられない一番でしょう。武蔵のような無敗街道を歩ませるのは千日の稽古をもって鍛となした馬体です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2019年11月26日のニュース