天栄から!ブラスト&フィエールマンも進む“凱旋門Vロード”

[ 2019年8月27日 05:30 ]

札幌記念を制したブラストワンピース(撮影・千葉 茂)
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 令和初めての夏ならではのタイムリーな話題をお届けする新企画「ナツ☆ウマ」も今回が最終回。今秋、仏G1凱旋門賞に挑む関東馬2頭にスポットを当てた。

 慣れた場所から世界制覇へ――。今秋、仏G1凱旋門賞(10月6日、パリロンシャン)に挑むブラストワンピース(牡4=大竹)、フィエールマン(牡4=手塚)の関東馬2頭が、ノーザンファーム天栄(福島県)で輸出検疫を受け、英国ニューマーケットを経由して大舞台へと向かう。凱旋門賞挑戦馬が天栄を出発拠点とするのは初めて。トレセンではない外厩施設で輸出検疫を受けることの意味、メリットを深く掘り下げる。

 北の大地での激戦から1週間。札幌記念を制したブラストワンピースと外から追い込んで3着だったフィエールマンが慣れ親しんだノーザンファーム天栄に帰ってきた。ともに次走は凱旋門賞。今夏の大半を過ごし、慣れ親しんだこの地で輸出検疫を受け、海を渡る。

 海外遠征を控える競走馬は出国前、伝染病の伝播(でんぱ)を防ぐために他馬とは隔離される。1週間(行き先によって異なる)の検疫期間中、検疫を受けていない他馬とは接触禁止。かつては普段と異なる環境下で落ち着きを失う馬、カイバ食いが落ちる馬もいた。出国前から心身のバランスを崩しては海外での快走などおぼつかない。特にオーストラリア遠征の際の検疫は条件が厳しいため、普段通りの調整を行い、コンディションを整えることが困難になっていた。

 「少しでも普段通りの調整をできるようにと造られたのが天栄の輸出検疫用厩舎です」。同ファームの木実谷(きみや)雄太場長(39)は語った。天栄で検疫を受けられれば放牧中と同じ環境で準備を整えることができる。

 「16年に豪州遠征したカレンミロティックが第1号。今年、豪州で好走したクルーガーも天栄で輸出検疫を受けました」と同場長。そして今回、凱旋門賞に挑戦する馬が初めて天栄で輸出検疫を受ける。検疫入り後の制約はトレセンでの検疫とほぼ変わらないが、2頭にとって天栄は放牧で訪れる“リラックスできる場所”だ。出走直前の馬が集まり、雰囲気がピリピリしているトレセンとはムードが全く違う。「環境の変化という面でのリスクは軽減されます」(同場長)。検疫中も普段と同じコースで調教を積むことができるという。

 2頭は出国後、英国ニューマーケットに滞在。レース前日に空路、決戦の地パリロンシャンへと向かう予定だ。ニューマーケットには今夏、ナッソーSを制したディアドラ、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSに挑んだシュヴァルグランも滞在した。調教場にウッドチップコース、坂路があり、日本と同じような調教ができる利点がある。フィエールマンを管理する手塚師は「日本と同じような環境で調整できるのはいい。(ブラストワンピースと)2頭一緒に行ける点も大きい」とメリットを語る。

 天栄を出発拠点に英国経由でフランスへ。これが日本競馬界の経験と英知を詰め込んだ“新たな道”。最高の結果をいきなり引き出せるか、注目したい。

 《今秋豪州遠征、関西馬3頭も》第1号からわずか3年。天栄で輸出検疫を行うことは珍しくなくなった。今秋、「特に制約が厳しい」オーストラリアに遠征する関西馬3頭も天栄で検疫を行う予定。春にも天栄を出発拠点として豪G1クイーンエリザベスSで史上最強牝馬ウィンクスの2着に激走したクルーガー(牡7=高野)が豪G1コックスプレート(10月26日、ムーニーバレー)に参戦。ここには宝塚記念馬リスグラシュー(牝5=矢作)も挑む。豪G1コーフィールドC(10月19日、コーフィールド)に挑戦するのは重賞3連勝中のメールドグラース(牡4=清水久)。こちらも天栄から南半球へと向かう。

 ≪キセキすでにフランス入り≫同じく凱旋門賞に挑戦するキセキ(牡5=角居)はすでにフランス入り。21日(日本時間22日)にシャンティイのギャヴァン・エルノン厩舎に到着した。G2フォワ賞(9月15日、パリロンシャン)をステップに本番へ。英G1ナッソーSを制したディアドラ(牝5=橋田)はG1愛チャンピオンS(9月14日、レパーズタウン)後に出否を決める予定。同馬は凱旋門賞には登録しておらず、出走する場合は追加登録料の12万ユーロ(約1400万円)が必要になる。エイダン・オブライエン厩舎の英ダービー4着馬ブルーム(牡3)に武豊が騎乗することも決まっている。

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