菜七子G1挑戦“予言”小説あった!馬主は風水師も一致

[ 2019年2月6日 05:30 ]

サインした小説2冊(蒼のファンファーレ、風の向こうへ駆け抜けろ)を手にする藤田菜七子
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 藤田菜七子(21)がコパノキッキング(セン4=村山)とともにJRA女性騎手G1初騎乗に挑む「第36回フェブラリーS」(17日、東京)。中央競馬の歴史の転換点となり得る、この大一番をまるで予言したかのようなスポーツ小説がある。2部作「風の向こうへ駆け抜けろ」と「蒼のファンファーレ」(古内一絵作)。構想、執筆開始は菜七子のデビュー前。にもかかわらず、今回のダートG1への挑戦があらかじめ分かっていたかのようにストーリーが一致する。“実写版”フェブラリーSを前に、一足先に小説で楽しみたい。 フェブラリーS

 主人公の芦原瑞穂は地方競馬所属という設定。描かれたのは菜七子がデビューした2016年より前だ。作者の古内一絵さんは語った。「“風の向こうへ駆け抜けろ”は11年の年末から取材を始め、執筆に当たったのは13年。菜七子騎手は競馬学校に入ったばかりで当時は全くお会いする機会がなかったです」

 瑞穂は相棒フィッシュアイズとともに試練を乗り越え、ついに中央G1チャンピオンズCに挑戦する。年々勝ち星を増やして、G1の騎乗チャンスをつかんだ菜七子の姿が古内さんには重なって見える。17年、初めて菜七子と対面した時の驚きは今も鮮明だ。「芯の強さ、聡明(そうめい)さ、冷静さ、負けん気…。とてもよく似ていました。話し方もきっぱりしていて力強く、競馬が大好きなことが強く伝わってきて…。本当に瑞穂のようでした」

 JRA女性騎手の勝利記録を更新し、現在49勝。活躍の秘訣(ひけつ)を古内さんは独特の視線で分析する。「デビュー当時から謙虚でしたが最近は“スタートは馬の仕事”と断言するなど、騎乗に対する自信とスタイルができてきたように感じます。沈み込むような重心の低い騎乗もカッコイイですよね」

 第1弾が出版された14年、JRAに女性騎手はいなかった。女性のG1挑戦などメルヘンだ。そう、はっきり言われたという。「でも私が子供の頃、日本人野球選手が大リーグに行くなんて話は、それこそ漫画でしかあり得なかった。だからきっと、女性ジョッキーがG1に挑戦する時代が、いずれ来ますよとお答えしていました」

 そうは言っても菜七子が彗星(すいせい)のごとく登場した時は本当にびっくりしたという。そして、あれよあれよという間にDr・コパ氏の所有馬でG1初騎乗決定。このことには腰が抜けるほど驚いた。「蒼のファンファーレ」に「ミスター・ワン」という風水師の馬主が登場するからだ。「実はちょっとDr・コパさんを意識した登場人物。でも菜七子騎手の初G1がコパノキッキングだなんて…。本当にびっくりです」

 女性騎手がダートG1に初めて挑戦する。自分が原稿用紙に描いたストーリーがついに本物となる。作家冥利(みょうり)に尽きるのではないか。「不思議な縁を感じずにはいられません。ついに小説の世界が現実になりました。正直、私の予想より、ずっと早かったです」。フェブラリーS当日は東京競馬場へ応援に駆けつける。事実は小説よりも奇なり。小説の世界を超えた劇的な結末が待っているかもしれない。

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2019年2月6日のニュース