JRA後藤理事長の思い 侍ジョッキーたちよ“黒船”に立ち向かえ

[ 2019年1月1日 05:30 ]

いざ、新時代へ JRA後藤正幸理事長に聞く(上)

笑顔でインタビューに答えるJRAの後藤理事長(撮影・郡司 修)
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 4月で平成が終わり、新たな時代の幕開けとなる19年。昨年は3冠牝馬アーモンドアイの登場、障害界の絶対王者オジュウチョウサンの平地挑戦などで大いに盛り上がった中央競馬は、5日の東西金杯からスタートする。今年は女性騎手への恒久的な減量特典付与など、さまざまな改革を実施するJRA。その狙いと期待する効果について、後藤正幸理事長(67)に聞いた。

 ――昨年を振り返り、最も印象に残ったことは。

 「競馬の主役である人と馬が一年を通じて活躍してくれた中、騎手にさまざまな記録が生まれました。一番大きいのは武豊騎手の通算4000勝。彼は勝つたびに記録を更新しているわけですが、4000勝は大きな節目だと思います」

 ――武豊騎手の存在感は今も非常に大きい。

 「いつインタビューを受けても“もっといい騎手になりたい”と常に向上心を持っています。競馬に対する真摯(しんし)な姿勢は他の騎手の手本になりますし、競馬メディア以外にもタレントのように出演しており、競馬界への貢献は大きいと常々思っています。凱旋門賞のパドックでは現地のファンからもサインや写真撮影を求められていて大変な人気でした。言ってみれば中央競馬の宝。これからも長く続けてほしいです」

 ――馬に視点を移すと、昨秋は3歳馬が大活躍。

 「アーモンドアイが牝馬3冠を達成後にジャパンCも勝ち、その後もマイルCS、チャンピオンズC、有馬記念と3歳馬が古馬を相手に好結果。この世代が元気なのは、年が明けて以降の競馬を考えると大変良いことだと思います」

 ――障害の絶対王者オジュウチョウサンの平地挑戦も大いに注目されました。

 「平地で活躍した馬が障害で好結果を残す例は今までも見てきましたが、平地で芽の出なかった馬が障害で活躍し、平地に戻ってくるケースは見たことがなかったです。(長山尚義)オーナーも含め、夢があるというか、勇気ある決断でしたね」

 ――グランプリ有馬記念のファン投票で3位に。

 「多くのお客さまがオジュウチョウサンが平地に戻って一生懸命走る姿に胸を打たれ、共鳴する部分があったのでしょう。物凄く話題性がありましたし、私たち主催者にとっては非常にうれしい挑戦でした」

 ――騎手に話を戻しますと、昨年は藤田菜七子騎手が女性騎手のJRA最多勝記録を更新しました。

 「年々勝ち星を増やしており、しっかり自分自身と向き合って精進し、一歩一歩、階段を上っていると感じます。これからも関係者や、お客さまの期待に応えていただきたいです」

 ――3月1日から女性騎手への新たな減量特典(注1)がスタートします。この制度改正には、藤田菜七子騎手の活躍と人気が影響しているのでは。

 「彼女の前は女性騎手がしばらく途絶えていましたし、かつての女性騎手はほとんどが短い期間に転職したり廃業したりしていました。せっかく騎手という道を選んだわけですから、少しでも長く継続できるようにしたいですし、新たに騎手になりたい女性がいれば参加しやすい環境をつくりたいと思っています」

 ――昨年は外国人の活躍が非常に目立ちました。

 「私の立場で一つ確認しておきたいのはC・ルメール騎手とM・デムーロ騎手はJRAの通年免許を持つ騎手であるということ。短期免許の外国人騎手と混同されるケースが多いのかな…とは思っています。免許を与えている立場としては、あくまでもJRA騎手の2人と捉えています」

 ――では短期免許で来日する外国人については。

 「短期免許は要件が変わり、現在は本当に世界の一流騎手だけが来日できるルール。主要国のトップが集まるわけですから、驚くような結果ではない気がします。逆に、例えばライアン・ムーアなどトップ騎手と同じレースに騎乗するのは、シャーガーCなど選ばれて出場する騎手にしかできないこと。日本にいながらJRAの競馬場でそういう機会を確保できるのは大きなチャンスで、彼らの技術、日常の行動も含めて、参考にできることはどんどん吸収してほしいです」

 ――そうは言っても、日本のジョッキーたちにとっては脅威となっている。

 「厳しい環境になるというのは確かにその通りだと思いますが、立場によって、いろいろな意見があるはずです。騎手である彼ら自身、やっぱり負けたくないという思いは当然あるでしょうし、そういう気持ちを強く持って自分の糧にしてほしいと思います」

 ――若手騎手の騎乗機会は、どう確保していくか。

 「若手騎手競走の騎乗資格を見直し、7年間は100勝を超えても騎乗できる(注2)ことにしました。競馬学校の卒業生はレベルが高いと評価をいただいていますが、実戦で乗れる機会がなければプロのジョッキーとしてなかなか成長できません。関係者の協力をいただき、少しでも多くの競走に参加できるようになればと思います」

 ――昨年は坂井瑠星騎手がオーストラリア、野中悠太郎騎手がアイルランドで武者修行をしました。

 「意欲を持って自ら世界へと飛び出していく、そういう若いジョッキーが出てきたのは将来に向けて非常に楽しみなことです。結果を残せるように、関係者も彼らの努力を評価してくれたらと思います」

 ◆後藤 正幸(ごとう・まさゆき)1951年(昭26)10月3日生まれ、東京都出身の67歳。75年早大卒、JRAに入会。ニューヨーク駐在員事務所長、総合企画部長などを経て、06年理事、11年常務理事、14年に理事長就任。

 注1 現行は男女を問わず、デビュー5年以内で30勝以下=3キロ減、同50勝以下=2キロ減、同100勝以下=1キロ減。3月1日から女性のみ、デビュー5年以内で50勝以下=4キロ減、同100勝以下=3キロ減、デビュー6年目以降や101勝以上も恒久的に2キロ減となる。

 注2 現行の若手騎手競走は見習騎手として減量の特典を受けている「デビュー7年目以内かつ100勝以下」の騎手のみ騎乗可能。

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