【有馬記念】“騎手界の二刀流”熊沢から同志へエール「凄い決断」

[ 2018年12月22日 05:30 ]

オジュウチョウサン 半端ない挑戦(6)

熊沢重文
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 師走のこの時季が来るとダイユウサクの激走を思い出すファンも多いだろう。91年有馬記念。ブービー14番人気の伏兵をVへと導いたのは、当時23歳だった熊沢重文。JRA現役騎手で有馬記念と中山大障害の両G1を制している鉄人は、今回のオジュウチョウサンの挑戦をどう捉えているのか。

 「甘くない」。それが率直な感想だ。まずは平地で連勝した2戦を「手頃な頭数で自分の競馬の形に持ち込めたのが勝因」と振り返った。その上で「今回は相手が一気に強くなる。G1のフルゲートで流れも相当厳しくなる。これまでと比べると、かなりしんどいレースになるはず」と冷静に分析する。

 ただ、果敢な挑戦に対しては賛辞を惜しまない。「この仕事は夢を追うことが一番。そういう意味で凄い決断だと思う。誰もやったことがないことをやるのは勇気がいること。勝ち負けの前に、レースに出ないことには結果もついてこない。それにファン投票3位。ファンが支持して競馬の注目度も上がるのは何よりだと思う」

 熊沢の平地G1制覇はダイユウサクのほかに88年オークスのコスモドリームが10番人気、05年阪神JFのテイエムプリキュアが8番人気。大舞台での常識を覆す激走で何度もファンの度肝を抜いてきた。諦めないことの意味を身をもって知るベテランのエールには重みがある。

 「もったいないという気持ちもある。障害ならもっともっと連勝を伸ばせたはず。効率のいい飛越と豊富なスタミナ。障害なら抜けた能力の持ち主だから」。50歳を過ぎてなお、平地、障害に乗り続ける騎手界の二刀流は正直な気持ちを口にして、最後にこう付け加えて笑った。「これで僕の馬のチャンスも広がったかな」。絶対王者が不在となった今年の中山大障害。熊沢はエアカーディナルで18年最後の大一番に臨む。

 ◆熊沢 重文(くまざわ・しげふみ)1968年(昭43)1月25日生まれ、愛知県出身の50歳。86年3月デビュー。同期に横山典、松永幹師ら。同29日阪神8RジュニヤーダイオーでJRA初勝利。88年オークスをコスモドリームで制しG1初勝利。12年中山大障害をマーベラスカイザーで勝ち史上初の平地&障害G1制覇を達成。15年には史上初の平地・障害200勝を達成するなど二刀流で活躍。JRA通算1万4937戦1028勝(うち障害235勝)。重賞31勝(うち障害15勝)。

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