【有馬記念】オジュウの才能見抜いた障害の師も心待ち

[ 2018年12月19日 05:30 ]

オジュウチョウサン 半端ない挑戦(3)

北総乗馬クラブ代表の林忠義氏
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 平地に見切りをつけられたオジュウチョウサン。送り込まれた先は千葉県香取市にある北総乗馬クラブだった。のどかな田園風景が広がる中、ジャンパーの基礎教育が始まった。その動きに隠されたポテンシャルを感じ取った人がいた。

 「ジャンプや走る姿勢にブレがない。素質が光っていた。モノが違う」

 同クラブ代表・林忠義氏(50)だった。障害馬術の日本代表としてシドニー(00年)、アテネ(04年)と2度五輪に出場。馬との意思疎通にたけ、高く正確に跳ばせるスペシャリストだ。同クラブ所属で障害馬術のホープ・小牧加矢太氏(21)は「おとなしくて、もっと覇気があった方がいいと思った」と第一印象を振り返るが、林氏は違った。世界のトップライダーとしのぎを削ってきた“眼力”は素質を見抜いた。

 「跳びが素軽く走りに負担がない。踏み切る位置が分かっているし、着地してから沈み込むように走る。あれは持って生まれたモノ。言ってしまえばセンス。走りに無駄がなく天才的でした」

 訓練内容は「企業秘密」とほくそ笑むが、基本的には馬術的なトレーニングを課した。いきなりハードルを跳ばせるのではなく、まずは人間の指示に従順になるよう教育。そして背腰を鍛え上げた。長距離を乗り込ませても疲れる様子はなかった。「ケロッとしていた。当時からスタミナは凄かった」。そして周囲に「オジュウは中山大障害を勝つ」と公言する。その言葉は現実となった。先見の明があった林氏の指導でオジュウはジャンパーとして堅固な土台を築いた。

 障害界を極めた後、異例の平地転向を果たした。林氏は平地2連勝を「勝負根性があった。厩舎関係者の調整がばっちりな上、何と言っても鞍上は武豊。オジュウが力んで走っていない」と分析した。さあ、資質を見抜いた“教え子”の晴れ舞台。「相手は強いが、どこまでやってくれるか楽しみ。勝ったら大ニュースだね」。林氏は師走の大一番を心待ちにする。

 ◆林 忠義(はやし・ただよし)1968年(昭43)3月1日生まれ、千葉県出身の50歳。多古高卒。00年シドニー五輪馬術の障害飛越団体11位、04年アテネ障害飛越個人64位。実家の北総乗馬クラブで代表を務め後進を育てる。馬術競技に本格的に挑戦している歌手の華原朋美(44)、アイドルグループ欅坂46の菅井友香(23)を指導したことでも有名。父の背中を追いかけた長男・忠寛(28)は障害馬術の選手で東京五輪の代表候補。

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2018年12月19日のニュース