【エリザベス女王杯】ノームコア95点 可れんな天女が舞う

[ 2018年11月6日 05:30 ]

天真らんまんな立ち姿のノームコア
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 調教師を引退して3年になりますが、まだ現役なら手掛けてみたかったなと思わせる馬に出合うことがあります。たとえばノームコア。「究極の普通」という意味を持つ馬名とは裏腹に、飛び抜けた才能を持った3歳牝馬です。顔つきはお嬢さん。競走馬とは思えないほど目が優しい。立ち姿も若い。能でいえば、頬がフックラして少女のように可れんな小面(こおもて)。ハミのくわえ方に緊張感がなく、能舞台の純真な娘のように天真らんまんにフワッと立っています。

 ところが馬体のバランスは芸術品のように整っている。トモのパワーを推進力に変える飛節から膝、つなぎ、蹄まで大きさも角度も傾斜も理想的。機能美に満ちた体つきです。秋が深まるとノームコアのような芦毛はいち早く光沢を失いがち。他の被毛よりも冬毛が早く伸びてくるため、くすんで映るのです。そんな芦毛が十分な毛ヅヤを保っているのは、よほど体調がいいからです。

 デビューわずか5戦。古馬になれば、非凡な四肢にもっとたくましい筋肉がついてくるでしょう。キャリアを積めば娘から淑女の顔に変わるでしょう。能でいえば小面から天女に用いる増女の面へ。羽衣をまとった天女が歓喜の舞で天上へ帰っていく、能の人気演目「羽衣」のように大きく羽ばたくでしょう。

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2018年11月6日のニュース