【JBCスプリント】TUBE前田、ノブワイルドで初の「口取りを」

[ 2018年11月1日 06:30 ]

TUBEの前田亘輝(撮影・荻原浩人)
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 人気ロックバンド「TUBE(チューブ)」のボーカリスト・前田亘輝(53)が所有するノブワイルド(牡6=浦和・小久保智)が、「第18回JBCスプリント」(4日、京都)に出走する。前走・テレ玉杯オーバルスプリント(交流重賞G3)で重賞初制覇を果たした愛馬について、前田がスポニチ本紙の単独インタビューに応じ、北島三郎オーナー(82)の所有馬キタサンミカヅキ(牡8=船橋・佐藤賢二)との“シンガー対決”を前に熱い胸の内を語った。

 ――競馬に興味を持ったきっかけは。

 「ロサンゼルスからの帰国便の機内で、たまたま『シービスケット』という映画(04年公開)を見たんです。1頭のサラブレッドが必死に頑張る姿にいたく感動して…。それまで全く競馬を知らなかったが、馬主ってどうやったらなれるんだろうと考え始めました」

 ――実際に、馬主になるまでは。

 「申請とか、とにかく凄く大変で、誰かに紹介してもらった方がいいとも言われたが、どうにか1人でやりたかった。それもシービスケットにあったシーンだったので。結局、資格を取るまでに1年以上かかりましたね」

 ――想像していた世界とは違ったか。

 「お金持ちの道楽で自慢大会かと思っていたが、全然違った。牧場があって、育てる人がいて、騎手がいて…。みんな走るために生まれてきて、順調に最後まで行くって馬はあまりいないけど、みんな均等に未勝利を勝てばいいなって思いますね」

 ――競馬界の人脈も広い。

 「元騎手の藤田伸二君の紹介で多くの人とつながった。武豊君、福永君、田中勝春君とか。それにしても、ジョッキーはたくさんお酒を飲む。いつか“どうしてそんなにお酒を飲むの?”と聞いたことがある。すると、何人かが言っていたのが“僕たちは毎日が命懸けなんです”と。その恐怖があるので、飲まずにはいられないと」

 ――JRAでは09年にノブクィーンが所有馬として初出走。初勝利は10年9月12日のノブヴィクトリーだった。

 「本当にうれしかったですね。TUBEの曲名から命名された“プロポーズ”はノブクィーンの子供だし、サマーボーイもそう。生まれるときの動画とかを送ってもらうんですが、感動します。本当にファミリーになっていく感覚」

 ――ノブワイルドについて。

 「ワイルドはサマーセールで競り落とした。とってもおとなしい子。先ほどのシービスケットも南関東から中央に行くというような話。重なるところがありますね。(馬名の由来は)僕の好きなギタリストのザック・ワイルドから。ノブオズボーンはもちろんオジー・オズボーンから」

 ――ワイルドと会話したとか?

 「タレントのボビー・オロゴンとは知り合いなのですが、彼の友人にアフリカのシャーマンがいるんです。その人は馬の言葉が分かる(笑い)。アフリカって、そういうスピリチュアル的なものがある。ワイルドが美浦トレセン(当時は畠山厩舎所属)にいた頃にそのシャーマンを連れて行きました。まず、儀式から始まるので恥ずかしいなと思っていたら、カッチー(田中勝春)も来てくれて。ワイルドの気持ちを聞いて“この子は大丈夫”と言っていましたよ。ボビーにその後、シャーマンの行方を聞いたら、“行方不明”と言っていた(笑い)」

 ――ワイルドは2度の骨折を乗り越えた。

 「競走馬としては、もう無理かなと思うタイミングもあった。これまたシービスケットにもそういうシーンがあったんです。なので、(同馬を管理する)小久保智先生と“2年は治療を頑張ろう”と。復活した時は泣きましたね」

 ――そして前走で重賞初制覇。前田オーナーにとっても、初の重賞タイトルとなった。

 「ヴァーミリアン産駒では代表になる馬なんじゃないかな。当日は現地に行っていなくて、(馬主の先輩である)Dr・コパさん、里見治さんにも、“なんで重賞初勝利のときにいないの?”と怒られました。実は、まだ口取り式には一度も写ってないんですよ」

 ――JBCスプリントでは、北島三郎オーナーが所有するキタサンミカヅキとの対戦も実現する。

 「キタサンミカヅキは強いですね。(これまでの対戦で)ワイルドもがっつりやられてますし…。北島さんには競馬場でたまにお会いして励ましていただきます。キタサンブラックは競馬の神様から北島さんへの贈り物ですよね。競馬だから勝てないことも多いけど、“馬に罪はない”とよくおっしゃっています。シンガーとしても馬主としても背中ははるか遠いですが、“ずっと続けなさい”と言っていただいたので、頑張ってみようかなと思います」

 ――ワイルドにどんなレースを期待する。

 「ハナを取って、自分から行くしかない。1400メートルだと垂れてしまうけど、1200メートルなら。当日は応援に行くつもりなので、口取りに出たいですね」

 ――自身も馬券は購入される?

 「基本的にはやらない。3連単とかやると、百何通りとかになって、訳が分からなくなる。買うときは穴馬の複勝ですかね。3着に粘ってくれたら、たまんないっスよ。ただ、ワイルドに関しては、一発があるかないかの馬で、3着は少ない」

 ――馬を購入するにあたってのポリシーは。

 「高額な馬は手にしない。あまり人気はないけど、晩成型的な子を狙いたい。キタサンブラックもずっと応援していた。あまり高額で落札されていない馬がああやって頑張ると人気が出ますよね。僕もそこを目指しています」

 ――最後に、馬主としての夢は。

 「アメリカの牧場に行った時に感じたのですが、いつか馬が好きな人たちとスタジオのある牧場を持ちたい。馬がいて、音楽が流れている。そんな明るい牧場があれば最高ですよね」

 ◆前田 亘輝(まえだ・のぶてる)1965年(昭40)4月23日生まれ、神奈川県厚木市出身の53歳。85年6月にロックバンド「The TUBE」のボーカルとして「ベストセラー・サマー」でデビュー。パワフルかつソウルフルな歌声でいきなり人気歌手の仲間入り。86年4月に「TUBE」に改名し、「シーズン・イン・ザ・サン」を発表。バンド名はサーフィン用語の「チューブライディング」に由来し、夏バンドとして一世を風靡(ふうび)。ミリオンセラーとなった「夏を抱きしめて」など90〜04年にシングル連続トップ10入りを果たし、NHK紅白歌合戦にも2回出場を果たした。87年からはソロでも活動。血液型A。

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