本場欧州で“もまれた”若武者・野中が帰ってくる

[ 2018年10月19日 05:30 ]

23日に帰国予定の野中
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 【競馬人生劇場・平松さとし】野中悠太郎が帰ってくる。

 15年にデビューし、1年目は4勝に終わったが2年目は11勝、3年目の昨年は13勝と少しずつ勝ち鞍を増やしていた。騎手仲間の中には、この成績以上に彼の騎乗を評価する人もおり、これからが期待される若手となった。

 そんな彼がアイルランドへ飛んだのは今年3月。「今のうちにたくさんの経験をしたい」と自ら厳しい環境に身を置く決意をして日本を後にすると、そのまま一度も帰国せず現在に至っている。私はアイルランドで2度、フランスで1度、彼に会って話を聞いたが、彼が面したのは甘くない環境だった。来日経験のある元騎手のジョニー・ムルタ調教師の下で毎朝、調教に騎乗。しかし、初めてレースで声が掛かったのは、現地入りしてから3カ月も後のことだった。

 その後も1鞍の騎乗を得るのにも苦労する日々は続いた。下位入線馬もランダムに後検量を要請されることがあるのを知らず、戒告処分を受けたこともあった。それでも帰国せず頑張る姿勢をムルタ師は高く評価。「彼は技術もあるので馬主の許可が下りればもっと乗せてあげたい」と語った。

 その後、ツテを頼りNo・1調教師のエイダン・オブライエン厩舎へ移って働いた。凱旋門賞の日はフランスへ渡り、欧州最大の一番を観戦。大先輩で海外の経験も豊富な武豊とも言葉をかわし、アドバイスを仰いだ。

 彼が所属する根本康広厩舎には先輩の丸山元気、後輩にはあの藤田菜七子がいる。“女性騎手”として脚光を浴びた藤田だが、最近は成績を伸ばし“騎手”として話題になることもたびたび。そんな彼女に先輩が刺激を受けないわけはないだろう。今回の修業も少なからず影響があったはずだ。21日に帰国を予定している野中。まだ21歳。欧州でひと回り大きく成長した彼の姿が見られることを期待したい。

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2018年10月19日のニュース